この手の作品は、男性側からの視点だけが先行ししてしまいがちだが、多方面からの客観的視点が効いている。男性側の気まずさや、内省的な観点からの演出ができていて、本来当たり前なのだが、クリアできていることは重要だと感じる。
世間体やモラル的な正しさが、全体主義の名の下に絶対であるような錯覚が人々の生きづらさを生んでいる現状を、コミカルに描き切っていた。違和感を紛らわすかのように目を伏せたまま大人になった人間と、主人公との相対化が物語を推進する。
本の虫のような主人公がフィクションの中ではなく、外の世界で手紙に書くべき答えを導き出したことも良かった。好きだった人を引きずったまま生きる主人公を万引きをして外に連れ出した人が誰だったか考えると面白い。
過激なセックスムービーでもあるが、生々しい気まずさが生まれないようなリズミカルな編集も、さすが城定監督といったところか。