一人旅

死にゆく者への祈りの一人旅のレビュー・感想・評価

死にゆく者への祈り(1987年製作の映画)
3.0
TSUTAYA発掘良品よりレンタル。
マイク・ホッジス監督作。

罪の意識を抱えたIRAテロリストの愛と苦悩を描いたサスペンス。

1976年に映画化もされた「鷲は舞い降りた」の英国作家ジャック・ヒギンズの同名小説をマイク・ホッジス監督が映像化した英国サスペンスの佳作で、若き日のミッキー・ロークが主演を務めている他、神父役で個性派ボブ・ホスキンスとIRAの仲間の一人としてリーアム・ニーソンが出演しています。

誤ってスクールバスを爆破してしまったIRAテロリスト、マーティンを主人公にして、彼がギャングを殺害した瞬間を目撃してしまったダ・コスタ神父と盲目の姪アンナとの交流の顛末を、神父を消そうとする葬儀屋兼ギャングの一味との対決を絡めて描いたサスペンス。無実の子供たちを死なせてしまった罪悪感に苛まれながらも、神父や彼の姪との交流を通じて少しずつ人間らしい優しさを取り戻し、やがて命を狙われる神父たちを救うため身を挺して敵に立ち向かうという“孤独な殺し屋の贖罪と愛情”は名作『レオン』(1994)に先駆けたテーマであります。

マーティンと盲目の女性アンナの交流はオーソドックスながら心温まるもので、中でも教会に隣接した夜の遊園地における観覧車デートは孤独なマーティンの優しさと淡い愛情を象徴するシーンです。そして教会における壮絶なクライマックスにおいて、人の命を奪ってきた過去の罪を人を救うことで償おうとするマーティンの哀しい勇姿に胸が熱くなります。

罪と贖罪、孤独と愛情、生と死をモチーフに描き出される英国サスペンスの佳作。主演のミッキー・ロークは『レスラー』(2008)の遥か以前に深い孤独と哀愁に満ちた演技を披露しています。
一人旅

一人旅