磯野マグロ

笑いのカイブツの磯野マグロのレビュー・感想・評価

笑いのカイブツ(2023年製作の映画)
3.6
【しょうもな。】29

あれだけストライクゾーンのせまい男に、2人も理解者がいた。ひとりはその才能に、ひとりはその生き様に。それだけでもう、十分じゃないか、と思う。
相変わらず岡山天音は、やばくて無垢なやつを演じさせるとピカピカ光る。本人はどんな人なんだろう。自分のバランスおかしくならないのかな。
相変わらず菅田将暉は、汚れてるのにどこか天使みたいな役に、苦しくなるほどの実在感を持たせてしまう。
岡山天音演じるツチヤは、あきらかに自分のことだけが好きすぎるんだよね。一瞬だけ松本穂香を誘おうとするシーンがあるけど、彼女に気があったわけじゃない。そして、あれだけ気にかけてくれた西寺の立場は、最後まで1ミリだとて考えはしなかった。自分の壁をぶち破れず、壁の向こうの「しょうもない」世界の手前の、自分だけの笑いの世界にとどまった。そして自分を無限に認めろ、と叫び続けた。その苦しさと自己憐憫がじわじわと沁みてくる映画だった。
とはいえ、実在のツチヤタカユキはいまもお笑いの世界にいるそうな。毎日素振りを一万回したからといって大谷の球が打てるわけじゃないけど、バッターボックスを用意してくれる人がいるうちは、しぬわけにはいかない。
磯野マグロ

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