虚構と現実が互いを侵食し合い、笑いの概念を根本から揺さぶる異色作。これを語るには、まず「笑いとは何か?」という問いを避けて通れない。表面的には狂気じみたシチュエーションや突飛な演技で観客を引き込むが、その裏に潜むのは人間の哀しみ、孤独、そして笑いという武器でしか守れない心の壁。
観る者は単なるエンターテイメントではなく、笑いを求める人々の必死さ、必然性、そして自虐を目の当たりにする。
主人公が巻き込まれるカオスな展開は、一見荒唐無稽に見えるが、鋭い視点で現代社会への皮肉を織り交ぜている。特に笑いというものが人間の本能的な部分に作用すること、そしてそれが同時に人を救いもすれば壊しもするという二面性を描き出す手腕は見事だ。まるで芸人のネタ中に本音が漏れる瞬間のような、心に刺さるリアリティが漂う。
しかし特筆すべき点は、観客を「笑わせる」という目的を超えて、笑いそのものを解体し、再構築する挑戦的なスタンス。まるで、観客一人ひとりが舞台に引きずり出されて、見せ物にされているような感覚に陥る。笑うという行為は、自分を曝け出す一種のアクションだということを、この映画は鋭く抉り出している。
笑いという虚構と仕事という現実の狭間でもがき続けた人間の物語。
ただ!こんな人と一緒に仕事したくないよね…とは思っちゃう。どんなに面白くても人間性が悪かったら笑えないのよ。