【第64回ベルリン映画祭　ジェネレーション部門出品】
『あなたのために生れてきた』ファビオ・モッロ監督の長編デビュー作。ベルリン映画祭ジェネレーション部門に出品、トロント映画祭でも上映された。

良い映画だった。ボーイッシュな17歳の少女が家族と向き合い、そして自分を見出すまでの物語。水の中のシーンなど鮮烈な描写が印象的。

上手く間を用いて思春期の少女の心を捉えている。父と娘、不在の兄、初めての恋など微妙な関係性を緊張感たっぷりに描いている。

全体としてミステリアスな雰囲気。不在の兄というのが全体の軸として通っているが、幻想を交えファンタスティックに描写される。

主人公グラツィアを演じた俳優さんの微妙な表情の変化を映し出している。その父や惹かれ合う青年、兄などみな顔が魅力的。整っているという意味ではなくいい顔をしていた。

グラツィアの悶々とした気持ちがどう帰着するのか、実に爽快なラストだった。言葉少なに淡々とした描写ながら実に豊か。グラツィアの不安な眼が印象的だ。

思春期映画とも言えるし「死」というものを本質的に捉えようとした哲学的な映画でもある。小品ながら良作の多いベルリンジェネレーション部門らしい作品であった。しみじみと良い映画だったと感じられる良作。

• #第64回ベルリン国際映画祭
• #イタリア映画祭2024

(イタリア映画祭2014) 家族の一員の“不在”を受け入れることも悲しみを分かち合うこともできぬ父と娘。グラツィアが兄との“再会”にだけ見せた少女らしい表情…この海中ショットが鮮烈。脱皮を思わせるラストも含めボーイッシュな彼女ならではの表情変化が生きた作品だった。

演技なんてぜんぜん分からないけど、いい表情してるね、とか、生意気にも思ってしまった、!