滝井椎野

女神の継承の滝井椎野のレビュー・感想・評価

女神の継承(2021年製作の映画)
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土着信仰の禁忌を取り扱ったホラーかと思いきや、人の怨念と悪意が引き起こす悲劇を描くタイプのホラー。観終えた後で感じたのは、信仰や愛といった高尚なものが嘲笑われるかのような純粋な悪意で、実に胸糞悪くて良かった。
色々なミスリードがある本作、最も救いがないのが女神バヤンの実在性だろうか。タイトルになっているにも関わらず、エンドロールのニムは「本当にバヤンが存在しているのか分からない」と語る。つまるところ、これは信仰の敗北であり、本作で最も重要なテーマなのではないだろうかと思う。
そもそも、信仰心というものは悪魔なんかを取り扱ってるようなホラー映画では唯一の対抗手段として描かれていることが多いように思うのだが、それをこうも完膚無きまでに打ち負かすことで、およそ人の手では敵うべくもない怨霊の恐ろしさをよく描けているように思った。

個人的に、終盤の儀式のシーンが良かった。あの『来る』をも彷彿とさせるインパクトは出そうと思って出せるものではないだろう。
滝井椎野

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