JONEY

女神の継承のJONEYのネタバレレビュー・内容・結末

女神の継承(2021年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

祈祷師の一族に生まれ、当代の祈祷師として小さな村で活躍するニム。そのニムの姉の娘・ミンが、原因不明の体調不良に見舞われ、以降人格が変わったように凶暴な言動を繰り返すようになる。途方に暮れた姉はニムに助けを求める。
ニムはミンが一族の人間として祈祷師の後継者に選ばれ、その影響で狂ったような振る舞いをしているのかもしれない可能性に思い至り、ミンを救うために祈祷を行うが……。



というざっくりあらすじ。


「祈祷師を取材しにきたクルーが残していた記録」といった体のモキュメンタリー仕様。
何が起きても録画が止まることはないので「こりゃ”カメラを止めるな!”なのか?」とフフッと笑ってしまったりもしましたが、土着信仰、田舎特有の嫌な雰囲気、家族の間での秘密、”神”のための存在、お祓いアベンジャーズ、そして惨劇!驚愕のオチ!っつって、ホラー映画好きの好物が全部乗せと行った具合の贅沢な映画でした。


そんな全部乗せ!な豪華なこの作品の中で1番「おお…………」になったのは、姪に降りかかった呪いの類などでなく『この土地の人間が信奉している女神バヤンなる”神”は存在しているのか否か』という部分。
ミンの危機に際して”バヤンの加護”の元に祈祷を行うニムだけれど、途中で明かされる「実際は姉(ミンの母)が継ぐはずだったが改宗して役目を放棄したため自分に回ってきた」ということ、様々に手を尽くすもミンの状態に捗々しい成果が得られていないこと、そして最後のインタビューで涙を浮かべながら「自分の中にバヤンがいるかわからない」との告白。そして、後に死体となって発見されるニム…という展開がくる。

ニムは最後のインタビューを受けた日の夜に亡くなったんじゃないかと推測するんだけれど、役目を押し付けられた立場ながらも懸命に祈祷師としての責務を果たそうとしていた彼女が「自分の中に神はいるのか」という不安を吐露した後の死であることもあり、「信仰が揺らいだ所為で加護を失った可能性」「疑念を持ったニムに対する女神からの罰である可能性」そもそも「ミンに取り憑いている悪霊にバヤンは勝つことが出来なかった可能性」もある。
もしくは単純に、ニムも不安に感じていたように「バヤンなどと言う”神”はそもそも存在していない、よって加護なんか最初からない(しかし悪霊は存在し、ニムは悪霊により殺されてしまった)可能性」もある。
様々な理由が想像できるけれども、真実を知る術はないし、これまでのニムの言葉の通りに『女神バヤン』の存在・加護を信じて物語を見ていたので、ニムが死に、関係者も死に、呪いの中心であるリンがどこかに消え去った後に放たれる「神はいないかもしれない」と言う言葉はかなり衝撃的で、「い、今このタイミングで根底を揺るがすことを言わないでくれたまえ!!」と同時に「そういう着地かぁ」と唸り、手を叩いて喜んでしまった。見事。

他にも「ニムに憑いていたのはバヤンではなく悪霊であった」とか、「バヤンは神には違いないけど都合よくニンゲンを救ってくれるような”善”ではない」とか色々想像できるけれども、これこそがこの作品を見ている我らの心の中にいる『神』の姿なのかななどと思ったりした次第。



今更ですが、犬は無事じゃないので苦手な人は避けた方がいいかもしれません。
JONEY

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