らっとちゃん

女神の継承のらっとちゃんのネタバレレビュー・内容・結末

女神の継承(2021年製作の映画)
4.2

このレビューはネタバレを含みます

タイの湿度高そうな空気感と日常の"なんでもない"ドキュメンタリーっぽさがちゃんとあり、綺麗でいろんなパターンやモチーフの画のアートっぽい見応えもあり、日常の不穏さの中に映像的にびっくりもあり、"撮ること"の傲慢さと無力さも孕みつつ、 心霊ホラーであり宗教ホラーでありヒトコワでもあり……
モキュメンタリーはながら見になっちゃいがちなんだけど、飽きずに最後まで観ちゃった!めっちゃ面白いし、ちょっとホラー映画では体験したことない"怖さ"!

どう怖いって、「信心を揺さぶる」怖さ。
日本で暮らしてて善悪のはっきりと対立した宗教観を持ち合わせていなくてこんだけ怖いんだから、悪魔ホラーがメジャーな文化圏の、「悪神」に対抗するのは「正しき神」の力であるという価値観で観たら本当に恐ろしいだろうな、と。
序盤は守り神として確固たる存在のバ・ヤンと、元カレ?バ・ヤン?もしかして精神疾患じゃないの?とさえ疑う余地があるようなと正体不明でぼやぼやした存在の悪霊、というバランスだったものが、
最後の最後で、超常的なパワーで明確に悪意をなす悪霊と、受け継いだとされるニムでさえ存在するのかわからないバ・ヤン、という人間にとってめちゃくちゃ都合の悪い現実に転じる「心の軸として信じている"救ってくれる誰か"」を打ち砕く絶望感。
"画面外にいる自分は安心"がホラーの気持ちよさとよく聞くけど、今作は現実の価値観をグラつかせる怖さがある。現代的宗教ホラーとして凄くよく出来てるんじゃないか、これ……。

ミンが生理になった時にトイレまで追いかけて隠し撮りするシーンは本当に不快で、でも後半の儀式失敗後にミンだったものが「私が撮ってあげる」と内臓丸出しのスタッフにカメラを向けるシーンで回収した時にめっちゃ納得&感心。普通に不快なだけの一描写かと思ってたけど、回収されたことによって(物語ではなく作品に対する)不快さの払拭だけじゃなく、"撮る"ことの暴力性が
加害者側としても被害者側としても主観で見れるというめちゃ良い描写となってる。
カメラマン(視聴者の視点)の持ってたパワーが崩壊する怖さもあり、そもそも単純にどっちの場面も絵面が気味悪いってのもあり……お見事!

ビジュアルも山奥の祭壇、儀式、花火といろんな景色をしっかり綺麗に切り取っていてアート感満載だし、(劇場公開された時にサブカル色の強いグッズ展開してたの納得)
話の中でサラっと流しちゃうけど、ミンと兄の関係、ニムのお姉さんが巫女になりたくなくてやったこと、撮影班の無許可隠し撮り等ヒトコワな要素も散りばめられてて、
サラっと観れるのに中身がちゃんと詰まってる。

テーマ・結末がとんでもなく怖くて、ちゃんとモキュメンタリーの空気も良さもあり、目で見ても話を追っても隙間なく面白い。めちゃ良いnewホラーだ。オススメしてくれた友達に感謝!