耶馬英彦

アステロイド・シティの耶馬英彦のレビュー・感想・評価

アステロイド・シティ(2023年製作の映画)
3.5
 2021年の映画「フレンチ・ディスパッチ ザ・リバティ、カンザス・イヴニング・サン別冊」でも同じ印象を持ったが、ウェス・アンダーソン監督の作品は、新聞や雑誌の切り抜きを使ったコラージュみたいである。あれもこれもみんな詰め込んで面白がってやろうという、少年の遊びのような発想で作られているように感じる。

 軍の描かれ方はデフォルメされたステレオタイプで、本部からの命令をそのまま発表し、何も疑うことなく実行する。愚かさは疑いようがない。軍が上で民衆が下である。命令する者と命令される者、支配する者と支配される者。軍は常に支配者なのだ。情報も統制する。世に出していい情報かどうかは軍が判断するのだ。
 軍は愚かだが、兵士の中には自分で考えたり判断したりする者もいる。民衆の対応はまちまちだ。軍に従おうとする者、抵抗しようとする者、策略を巡らす者。無関心で自分のことに精一杯の者もいる。
 そういったすべてを笑い飛ばしてしまおうというのが本作品だ。隕石が落ちたクレーターに、隕石を回収しに宇宙人がやってくるという発想は秀逸。よくわからない出来事に右往左往するのが人類で、今も昔も変わらない。パステルカラーの町を舞台にドタバタが繰り広げられる。
 こういう作品は知的な興味をそそるから、有名な俳優がたくさん出演したのも頷ける。俳優は基本的に知的好奇心が旺盛で、人類の愚かさの典型を演じてみたいと考えるのだろう。

 以下は余談。
 地球温暖化で騒いでいるが、そもそも地球は昔から温暖化と寒冷化を繰り返してきた。寒冷化して氷河期となり、温暖化して間氷期となる。現在は第四間氷期だ。
 地球の歴史を一日にしてみると、1時間は2億年弱である。1分が約300万年。1秒が5万年。恐竜の登場は2億3000万年前だから、一日で言えば22時50分頃だ。6600万年前のチクシュルーブ・クレーターに隕石が衝突したディープインパクトで絶滅したとされているから、23時38分頃だ。恐竜が地球にいた時間は48分。人類が登場したのは500万年前だから、一日で言えば23時58分20秒頃になる。いまのところの在地球時間は1分40秒だ。
 恐竜と同じように何らかの原因で絶滅するのは間違いないが、人類は驚異的なスピードで地球環境を破壊して自ら住みにくくしているから、恐竜よりもずっと短い時間しか地球にいることができないだろうと推測される。で、それがなにか?
耶馬英彦

耶馬英彦