馬宮

アステロイド・シティの馬宮のレビュー・感想・評価

アステロイド・シティ(2023年製作の映画)
3.5
ウェス・アンダーソンさんは役者と芝居が好きなんだねえ。
ちなみに一周見て「わかんねえな~」になり、二回目をウォッチパーティしながら見たらなんとなく「あ~」になる場所が多かったので周回推奨です。

トンチキ宇宙科学のやりたい放題コメディはいつものこの監督のノリかあ~というところはありつつ、劇中劇ではない部分がこの映画の一番伝えたいところなんだろうな。とぼんやり感じた。
というか伏線……つーか劇中劇のワンシーンのことを冒頭で”俳優”が述べたりするから、初見だと何がなんだかわかんないでしょ!! 二回みたらだいたいなんのことかわかった。いやわからんことのほうが多いが……。

意味不明というより、伝えたいことを闇鍋の中に放り込むから難解になっている感じがする。
トンチキ宇宙科学のやりたい放題コメディの中に自前の演劇論をぶちこんでくるんじゃない。ただこのコメディ調のぶっとんでる感じはいつものこの監督の調子なのでそこは単純に楽しい。
あと画面の色調がカラフルでいい。


映画そのものの内容としては演じること……何かしらの役者や演劇に対する監督の演劇論をベースにしてあるのだろうなー。
「役を作る事」、「演じること」、「舞台を作り上げること」?
私は舞台演劇などに造詣がないからテーマ性としてはいまいち響くところが少なかったが……それでも悲劇のヒロインをやってみたいミッジが「けど私は将来性のある喜劇役者(コメディアン)」と自分を評するところや他評もそうである場面、役のことが「わからない」と悩む宇宙人役の役者、役に入り込みすぎ、それでも「演じる」ことを続けなければならない主人公。脚本の切り捨てられた外側にいる妻役の女性との会話で得た「役」の感情。


舞台という世界、役という内面。どんな閉じているように見えるものにも「外」があるんだよ。ということをなんとなく感じるような、そうでないような。
最後の眠りと目覚めの意味を自分の言葉で上手に表現できないですね。
なんか……監督は演者たちに向けて彼らのためにこれを作ったんじゃないかなあ。観客を楽しませよう! という部分には主体がない気がする。

役者と芝居が好きなんだねえ……………………(結論)


まあ何を言っても私はこの作品の中で、一生何かしらに挑み続けている破壊レーザー光線開発者の少年の存在感と、彼の臆病なんだか尊大なんだかわからんメンタルが一番好き。
宇宙という広大な「外」の中で自分を発露するには、挑み続けるしかない。大勢の中で自分を表現していかないと「外」において有象無象の声のない小石になってしまうのはきっと同じことで、でも彼は宇宙規模でその恐怖と戦っているんだ……。

俺も挑むか。何かに。
馬宮

馬宮