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海炭市叙景のamuのレビュー・感想・評価

海炭市叙景(2010年製作の映画)
3.8
ずっと観たかった「海炭市叙景」。
函館の街が好きかつ、「そこのみにて光輝く」のファンとして、函館三部作の第一作目である今作をやっとの思いで観ることができました。(U-NEXTもプライムもなかなかこの作品だけ配信してくれなかったのですが、U-NEXTさんありがとうございます!)

だが、楽しみにしていた気持ちとは裏腹に、とっちらかっちゃってるストーリー展開に戸惑いしか無く、それは短編集の中からエピソードを抜き取ってまとめた作品というのが理由なのかもしれないけれども、とはいえ接点の無い様々な事情を抱えた何組かのお話が、同時進行でも無ければひとつずつでも無く見させられる流れに、なんかもう疲れて疲れて。

そもそも私は、何組かの人間模様を同率に扱われるのが少し苦手で、主軸な一組は欲しいと思ってしまうのだ。伝えたいことを受け取りやすいからだとは思うし、あくまで個人的な得手不得手なだけであって、作品として良い悪いでは決して無い。でも、悪く言うと、色んなパターンの家庭の事情、そして全部見事なほど不幸で、マジで救いが無くて、どの家庭のことも知りたくないといった具合が悪くなりそうなストーリーで、誰一人接点が無いからもうわけがわからない。例えていうなら常にイライラしている人や、自らそういうパートナーを選んでそうなってしまっているのに延々と愚痴を聞かされているような。作品自体は嫌いじゃないです、決して。だけど、もんのすごい負の人間ばかりに取り囲まれてしまった気持ちで、ネガティヴに殺されそうです。

また、冒頭一組目の谷村美月さんとピストル兄弟が主軸だと思って観てしまったために、すごいフラグ立てたまま消え、全く無関係な人が次々に出てきて、でもきっと兄弟に絡んだ他の人間の話なんだと思いたい気持ちで観ていたけれど、全く関係など無く、共通点は函館の情勢の不幸さと、どの家庭も暗いということだけで、もうインパクトの強いフラグなんか立ててくから気になっちゃって気になっちゃって他の人達の話なんかどーでもいいよ、お兄ちゃんどうなったのよ!妹、あのあとどうしたのよ!と、それにしちゃ全然話が兄弟のことに戻らないし、飲んだくれた悪女の南果歩って見慣れすぎてもういいよギャーギャー喚くなよとかもう、負のパワーが強すぎてすさむわ!笑

あーーめちゃめちゃしんどかった。

結構、こういうの大丈夫なんだけどな。南果歩苦手だからかな。

でもでも、そんな負のパワーに負けない感想も最後に、。オーバーフェンスの感想に書いたかもなんですが、私はそれでも函館の街がとても好きなのです。で、二作目三作目、また函館が舞台の「君の鳥はうたえる」についても季節は全て夏で、私がこれまで函館に行った時も夏で、なので冬を知らなかった。だから、冬の函館の街を見れて嬉しかった。

見せないだけで、家庭の事情や人間模様はこの作品より深く辛い思いをしている人達もたくさんいると思う。愚痴にしてしまったり、負の連鎖でどんどん自らを不幸みたいにしてしまわずに、時には開き直って、自分を大切に優しく生きていく方法を持っていってほしいと思う。函館に限らず、東京だってどこだって、それは変わらない。
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