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パラレル・マザーズのakrutmのレビュー・感想・評価

パラレル・マザーズ(2021年製作の映画)
4.8
同じ日に子供を産んだ二人の女性の数奇な運命を、未だに内戦の傷が癒え切れないスペインの現状とともに描き出した、ペドロ・アルモドバル監督のドラマ映画。妻がいる男性との子供を産んでシングルマザーになることを選択した写真家ジャニスは、その男性の一言から子供の出自に疑問を持ち、DNA検査の結果、自分の子供でないことが発覚する。同じ病院で同じ日に出産した若い女性アナの子供との取り違えが起こったかもしれないと思い悩むが、一方でアナの子供は…

ペドロ・アルモドバル監督の今までの作品の中でも、一二を争う珠玉の映画だと断言できる。彼の作品の中心的テーマである親子の絆を本作でもテーマとしながらも、彼の作品の特徴であるサイケデリックな世界観を排除したシリアスな内容が、まずは新鮮な驚きである。そして、本人の心情を想像することも難しいような複雑で示唆に富んだプロットの中で、ジャニスを見事に演じているペネロペ・クルスが本当に素晴らしい。アルモドバル作品での彼女はとてものびのびした演技をいつも見せるが、その中でも一番の出来だと思う。ヴェネツィア国際映画祭で女優賞を受賞したのも当然であろう。決して主演することはないが、アルモドバル監督のミューズの一人であるロッシ・デ・パルマも健在で嬉しい。

さらに本作の特徴として、ペドロ・アルモドバル監督が今までは取り上げてこなかったスペイン内戦という政治的なテーマを扱っている点があげられる。未だに集団で埋められたままである、虐殺で命を落とした人々の遺骨を発掘するというプロットには、家族愛とともに、彼の祖国に対する愛も表現されているのかもしれない。

・ペネロペ・クルスが赤ちゃんの写真を撮っているシーンが可愛らしかった。
・DNA検査が親子をつなぐ道具としても親子を引き離す道具としても用いられるという描き方も印象的。
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