夜行列車に乗ったカリート

死刑にいたる病の夜行列車に乗ったカリートのネタバレレビュー・内容・結末

死刑にいたる病(2022年製作の映画)
2.3

このレビューはネタバレを含みます

白石監督作。阿部サダヲが送る、重苦しいフィクション寄りの猟奇殺人ムービー。

榛村(阿部サダヲ)は何人もの青少年・少女を殺し、死刑判決の拘留中。大学生・雅也は、かつて自分に良くしてくれた榛村に呼び出され「9件目の殺しは自分ではない」と言われ、事件の真相を調べていく…

白石監督らしい、陰鬱さと過激な描写が作品全体に漂っています。
現実路線な作品ですが、内容はかなりのフィクションです。

殺人鬼を演じた阿部サダヲがとにかく有能で、その洗脳と先読みによって、他の登場人物は支配されてしまいます。
見てる側からすると、そんな都合良く全員引っ掛かるかね…という感覚があって、この辺がフィクションさを加速させてます。
あんな有能なのに、なんで捕まったのかも飛ばさず、見せるべきでした。

所々、現実味の無い演出も気になります。
雅也が出会う金山の挙動とか。不審者過ぎるんですが、それに対する雅也の対応も、なんか不自然でした。あんな奴がずっと信号待ちしてたら、もっとビビるでしょ。

タイトルにオチが含まれていて、結局は全部榛村が楽しむための興じだった…という内容です。では「病」とは何のことか…というのが主題ですかね。

榛村の病は、他人を殺して楽しむという、生まれ持った気質、と受け取りました。
自己を見失ってるのではなく、本来の姿がそれである、ということですかね。
※劇中引用のキルケゴール「死にいたる病」は、本来の精神・自己を見失った状態(絶望)だそうです。
この辺は色んな意見が出そうな作品。

ですが最後のオチはやり過ぎでした。ヒロインが榛村に洗脳されていて「病」に感染しているという。
あれで一気に「全部悪いジョークだよははは」と言われた気分でした。

見ても晴れやかな気持ちにならない映画です。