拘泥

サウダーヂ デジタルリマスター版の拘泥のレビュー・感想・評価

4.3
私は生きるにマジ無様とは言え生まれ育ちは客観的に見て明らかに恵まれた側で何も知らないのであまりこの社会については語る口を持たない。証拠に私は「その場」からの脱出を画策したことがない。遠方の大学へわざわざ来たが定期的に帰っているし、そもそも地元は都市だ。いくらか「その場」から抜け出てきた人に会うことはある。それは、押し並べて大学を使って脱出してきた人だったまあ自分が学生だからだが。そして大学を武器にできる様な人間はここで語られない。ドカタを正に疑いようのないものと信じた。
当人達では本当に何一つ分かりようがない掃き溜めの坩堝。その地の(というかほとんどの)日本人がSaudadeを解する由もなく、それに一番近いボキャブラリーは山王団地。日本人同士は通じているのかというとそんなことは全くなくて、同じことは一つだけ、ただ皆平等に金がない。哀れさの共有のみに成り立つ莫逆の家族、一族。
明らかに最も美しかった喪われた商店街の幻が、現れたものの中で恐らく「サウダーヂ」に最も近かった物であろうが、とすれば何て哀しい言葉だろうか。Et in Arcadia ego。の癖に酷いことにアルカディアはない。彼の地としてのタイは夢の中だけにある。
続編の特報映像終わった後に流すのこの上なく萎えるからやめろ。
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