ハル

人と仕事のハルのレビュー・感想・評価

人と仕事(2021年製作の映画)
3.5
捉え方が難しいなと思った。

有村架純と志尊淳がインタビュアーとして様々な人に話を聞く作品なのは間違いないのだけれど、視点がフラットではないからだ。

それとやるならば、二人だけで覚悟を持って最後までインタビューを行ってほしかったかな。

風俗関係の女性達へは監督がインタビューを行う違和感。
「綺麗事だけでは済まされない切実な苦しい部分」を有村架純は受け持たないの?と感じてしまう。

また、インタビューを行う相手はいわゆる社会的弱者と言われる方々ばかりが対象となっている為、これは立ち位置によって受け取り方や意味合いが大きく異なる。

インタビュアーの二人は仮に仕事が1年、2年行えなくなっても、風俗関係の方やホームレスの方の様に、生活そのものが出来なくなる心配は全くないはず。

こういった部分の温度差やギャップを感じてしまった。

「生きる為に仕事をしている人」と「経済的に自由な側面があり自己実現の為に仕事をしている人」

マズローの欲求5段階説で言うとまるで階層が違う者同士の隔たりというか、仕事をテーマに扱うならば、本質的なこういった部分の掘り下げが欲しくなる。

ただ、その部分の懸念事項は劇中二人も話されていたので、企画的に厳しい部分がたぶんにあったのかもしれない。

そして、テーマである仕事の部分にも少し。
確かに仕事に貴賎は無いとは思うが、それはやはり見る角度次第ではないだろうか。

実際に生きていく上で、仕事と賃金と生活は密接に関わっており、現場の事を話されている農家の方や夜の仕事を営む方(あまり好きな言葉でない)からはこの様な生活面の言葉が多かったはず。コロナ禍なら尚更。

作品本作全体を通じ、こういったズレが目立つ形。

とはいえラストに、二人だけで話すシーンは凄く良かったので最後に付け加えたい。
リアルな所感というか「売れている役者」の考えている事や仕事観が聴けることは滅多にない。
こういった新しい企画・試みだからこそ鑑賞できる場面だったように感じられた。二人のファンならば実に貴重な本音の数々が伺え、この部分だけでも価値があるのは間違いない。
ファンじゃ無ければ…
作品として楽しめる要素は少ないのかもしれない。
ハル

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