rage30

ある男のrage30のネタバレレビュー・内容・結末

ある男(2022年製作の映画)
-

このレビューはネタバレを含みます

他人の名前を使っていた男の正体を探る、ミステリー作品。

映画の序盤に描かれるのは、心に傷を抱えた男女のロマンス。
バツイチ女の色気がある安藤サクラも良かったし、ミステリアスな窪田正孝も良くて、すっかり引き込まれてしまいましたね。

ところが、男の方が急死して、別人の名前を使っていた事が分かると。
ここから妻夫木聡演じる弁護士に主人公が変わり、映画のジャンルもミステリーへとギアチェンジ。
男の正体への興味は引かれるものがありましたし、謎解きもシンプルに楽しめました。

結局は、男が戸籍を交換していた事、殺人犯の息子だった事が明かされるわけですが、父親からの呪いの継承が一つのテーマだったのかなと。
それは在日朝鮮人として差別される弁護士も同じで、自分の責任の及ばないところで自分自身を規定されてしまう理不尽さたるや…。
親が人殺しであろうが、外国人であろうが、子供は子供で分けて考えるべきだと思いますが、家族や人種といった1つの属性に押しはめて考える事の恐ろしさを改めて感じました。

なかなか重たい話ではあるものの、男の子供は父親の愛情を理解していた様で、子供にまで呪いが継承されなかった事は救いであり、希望と言えるでしょう。
当たり前の話ですが、人殺しの息子だからといって、息子が悪人になるわけではないのです。

最後に不満点を挙げさせてもらうと、曽根崎(本物の谷口大祐)が戸籍交換した理由も描いて欲しかったし、弁護士の成長も見たかったかな。
あの「どっちの名前を言うの?」というラストも良かったんですけど、何だか逃避願望が肥大しちゃった感じで、むしろ後退した様にも見える。
それよりも、男の生き様を見て、現実と戦う力を得て欲しかったし、せめて差別的な義父に一発カマすくらいの描写は見たかったですね。
rage30

rage30