rage30

ジュリアンのrage30のネタバレレビュー・内容・結末

ジュリアン(2017年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

離婚した父親に付きまとわれる母子の話。

裁判で共同親権になってしまった事で、主人公親子はDV親父とも交流せざるを得なくなるわけですが、このDV親父を演じたドゥニ・メノーシェが素晴らしかったですね。

一見、物静かな男に見えるのだけど、とにかく体がデカいというだけ威圧的だし、いきなり怒ったり、泣いたりと情緒不安定で、何をしでかすか分からない怖さがある。
そんな男と車の中、密室で2人きりにされる息子の恐怖と嫌悪感たるや…。
下手なホラー映画よりも、よっぽど怖いし、不快なものを感じましたよ。

このDV親父の問題は「人の話を聞かない」という事。
相手の話を聞いたり、気持ちを想像したり…といった配慮が全くなく、常に自分の話や気持ちを押し付けてばかり。
DV親父と対面すると主人公親子が押し黙ってしまうのは、彼との対話を諦めるまでに至る時間を感じさせ、悲痛なものがありました。

そもそも、子供に「あいつ」呼ばわりされたら、傷ついたり反省するのが普通だと思うんですけど、そういった態度はまるで見せない。
何でも強引に物事を押し進めて生きてきた…まるでジャイアンがそのまま大人になった様な人なのでしょう。

ただ、その一方で、彼の事を他人事に思えない部分もあって。
離婚して家族から引き離され、実の両親にも勘当されてしまったら、パニックにもなるだろうし、人の話を聞く余裕もなくなれば、自暴自棄になってしまうかもしれない。
実は誰しもが、あのDV親父になってしまう可能性があるのかもしれません。

日本も共同親権が導入されるみたいですけど、映画でも描かれた様にDVを証明するのは難しいし、警察がどこまで介入するかも分からないしで、ジュリアンみたいな子供は確実に増えていくのだろうなと思わされました。

共同親権の是非はともかく、共同親権について考えるキッカケとしてはベストな映画ですし、そうしたテーマ性を抜きにしても、ホラー映画としてメチャクチャ面白い作品なので、多くの人に見て欲しい作品です。
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