わっしょい

観察者のわっしょいのネタバレレビュー・内容・結末

観察者(2021年製作の映画)
4.2

このレビューはネタバレを含みます

深淵をのぞく時、深淵もまたこちらをのぞいているのだ。

単なるエロ映画に収まらない、どんでん返しの面白さがある映画。
こういうオチか、という所から二転三転と展開があるのが面白い。

新居で同棲を始めたカップルが、向かいのカップルの情事や男の不倫現場を目撃し、覗きにのめり込んでいってしまうというストーリー。

主人公の女性ピッパの描かれ方が好きだった。
ピッパは眼科医で人の眼球を診る仕事をしている。
「見る」ことに携わる仕事をしているからか、覗きにも興味深々になり、最初に乗り気だった彼氏を置いてきぼりにするほどに覗きに執着するようになる。

向かいの女のマーゴ(ピッパが覗きの際につけた仮称)ことジェシカが眼科に来院したことで親しくなり、2人でスパに行くくだりが特に好き。
ピッパの本質が、これでもかと描かれている。

1つめは、風呂場で同姓の前で裸になることすら抵抗を示すシーン。
見る側であることに固執する一方で、見られる側になることには抵抗を感じていることが分かる。

2つめは、ジェシカのことを本名ではなく自分のつけた仮称のマーゴと呼んでしまうシーン。
仲良しのフリをして、本当は覗きの対象としてしか見ていないことが分かる。

3つめは、サウナで人生観を語るシーン。
自分のいる場所が正しいか不安になるみたいなことを言う所。
仕事も私生活も覗く側として満足していると思いたいけれど、深層心理では覗かれる側になりたいと感じていることが見て取れる。

上の3つめの深層心理が起因で、ピッパは向かいの不倫しまくり男に惹かれていることが分かる。
向かい男は写真家で、シャッター越しにモデルを覗き込んでいる訳である。
一方で私生活では、ジェシカや不倫相手との情事を向かいのピッパ達に覗かせている。
つまり、ピッパの欲求にドンピシャな男。
なんだかんだで2人で飲むことになり、向かいの男が一気にピッパの深層心理の扉を開けるのが、見ていてこれまでの答え合わせみたいな感じがして気持ち良かった。

その後二転三転していくけれど、そこはもう単純にエンタメとして、まず面白い。
この映画のメッセージも、一区切り目、二区切り目、三区切り目でそれぞれ違って感じられるのも面白い。
理想論は、ラストのゲイカップルの言う「他人に過度に関心を持つな」だと思う。
けれど、そんなことは多分人間には無理だし、その手前の「深淵をのぞく時、深淵もまたこちらをのぞいているのだ」的な展開からのメッセージの方が、自分にはより本質的に感じた。

エロもサスペンスもどんでん返しも、どれも良い映画だった。
わっしょい

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