飯塚花笑監督作品。
社会学には当事者研究があるように、おそらくこの作品も監督の当事者意識が込められている。監督の思いが痕跡として残る作品はとても素晴らしいと思うのでみてよかったと思う。
トランスジェンダーの生きづらさ。真也のようにFtMならば、彼女と呼ばれる時、産む性としての女性を語られる時、病院で戸籍名で名付けられる時、とてもしんどい思いをするだろう。それが巧みに描かれている。
ユイの不安も分かる。真也と結婚するならば、その後の性愛について不安になるだろうし、自らのセクシュアリティが揺らぐだろう。私は本当に異性愛なのかと。ただ別に真也以外の「男」とセックスしてもいいのではないかと思ってしまう。それを認めることは真也の愛だと思うのである。
また彼らが結婚に固執するのはよく分からない。マルクス主義フェミニストなら結婚制度は、家父長制を維持させ、異性愛を上位に秩序付ける制度と考えるだろう。だから彼らが愛の証として結婚しようとするのはよく分からない。まあ彼らは群馬という地方に住むから結婚に駆り立てる規範が強固に生じているのも分かる。ただ私自身、所有という考えが苦手で、結婚を私的所有権の発現と捉え、否定的に価値づけるからこのように思うだけなのかもしれない。
物語それ自体はとても好意的である。だが撮り方と音のつけ方があまり好みではない。バストショットが多用されていて、カメラと人物の距離が近い気がする。また会話のシーンでは切り替えしショットの前に二人を俯瞰して撮るショットが欲しいなと思った。音のつけ方も過度で、ないほうがいいなと思った。
撮り方には疑問点が多いが、今後の作品が楽しみである。
蛇足
片山友希さんはココロオークションのPVから気になっていた方なので映画でみることができてよかった~
今後の活躍に期待!