ブラックユーモアホフマン

さがすのブラックユーモアホフマンのレビュー・感想・評価

さがす(2022年製作の映画)
3.4
面白くないなあ。

一つ一つのシーンや細かい演出には良いなと感じるところも多かったのだけど、それぞれが線になって物語としてうねっていかない。

結局、誰のどの気持ちを一番印象付けたいのか。視点を三者にバラけさせていることでどれもが中途半端になってしまっているように感じた。

ハリウッド式の脚本の書き方が全てだとは思わないけど、誰が何を乗り越える話なのか。と言ったら、主人公は伊東蒼さん演じる娘の楓ということになると思うのだけど、視点が色々だからやはりブレる。
楓の目線で映画の半分過ぎくらいまで行った方が良かったんじゃないだろうか。意外と前半の彼女のパートがサクッと終わってしまって、中盤からの山内と父のパートにかなりの時間が割かれ、その間彼女の存在感が極端に薄れるから、主人公になりきれない。
だから最後に彼女の目線に帰ってきた時、彼女の行動に気持ちが乗らないし、そもそもなぜ気付いたのかも投げっぱなしで雑。
でも伊東さんの演技はとても良かったです。だからこそ勿体ない。

死と性、残酷さと笑い、など相反する感覚を同時に、もしくは交互に繰り出すことで観る人の心を揺さぶろうとする演出が、片山監督の狙いであり癖なのかなと思ったが、ちょっとそれがあざとく感じた。

題材の選び方も殺人、自殺、万引き、難病、AV、西成とか、これ見よがしに「どう?エグいでしょ?タブー犯しちゃってるでしょ?」って言いたげなものを集めてて、なんか逆に幼稚に感じた。イキってるガキのセンス。でも卓球は良かった。もっと卓球要素を前面に出してくれても良かったと思う。

清水尋也演じるアイツの軽薄さも気になった。それは狙いなのか、それとも清水尋也自身の性質なのか分からないが。殺人犯をカッコよく描けとは言わないけれども、興味が持てないんじゃ映画のキャラとしては弱い。こんなバカに付き合ってられるかよと終始思ってしまった。せめて最後もっと情けなさやカッコ悪さが見えたりしたら良かったのに。

韓国映画っぽさはある。街中追いかけっこシーンとか田舎サスペンス感はナ・ホンジンっぽいなとか、最終的にこの話どういう気持ちになればいいの?という観後感の複雑さはポン・ジュノっぽいかなとは思うものの、脚本力や演出力はまだ比べちゃいけないレベル。

そして『岬の兄妹』に続いてまたしても監督の名前が最後中央で止まった。これは確信犯だ。これも気に入らない。

【一番好きなシーン】
公衆トイレで服を着せるシーン。