萩原くわがた

fOULの萩原くわがたのレビュー・感想・評価

fOUL(2021年製作の映画)
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ヒットでもなければ、ホームランでもない、その名もfOUL。新時代を切り開いた不世出スリーピースバンドのライブ映像で綴る映像作品。

自分は25歳。本作で初めてfOULというバンドを知りました。
日本の音楽について、ましてやバンドなんかについても全然詳しくない私だけど、コロナ禍になる前はたまに仕事帰りなどに渋谷のライブハウスに行って、3千円払って聞いたこともないグループ名のバンド、アイドル、歌手 etc…なんかの爆音を浴びていた。それが凄い楽しかった。
この2年ほどはそんな機会もなく、寂しいななんて思っていたところで、サイコゴアマンを見に行った時に流れたfOULの予告編に心が躍った。

作品自体は初めはNHKのドキュメンタリー番組みたいにバンドの説明をしていくのかな?なんで思っていたが、蓋を開ければそこはライブハウスだった。独創的で情熱的な曲を絶え間なくぶつけられ初めは戸惑いもわずかにあったが、爆音に内臓を揺らされている内に私はライブハウスで熱狂する客の1人としてfOULの曲にトリップしていた。ここまで映画館で「立ち上がりたい」いや、「飛び跳ねたい」と思ったのは初めてだった。20年前の荒れた画質の映像のはずなのに、凄まじい鮮度の音楽に打ちのめされた。

曲の合間合間に挟まれるfOULのボーカルから語られる言葉は1分ほどずつの短さだが、ライブ映像に奥行きを与える。
「別に俺たちの音楽を多くの人に知ってもらいたいなんて思ってない。そしてその考えはメンバー全員が肯定している」
ヒットでなければホームランでもない、”fOUL”を体現した言葉がそこにあり、強烈な魅力を放っていた。

ライブ映像が一通り終わるとその後さらにエモーショナルな展開があり、最後は”映画らしく”作品は終わりを迎える。2005年に活動休止をした彼らだが、現代、この今、そしてさらに未来まで彼らはfOULだった。
劇場でこの作品を見れて本当に良かったと思う。