あさ

パワー・オブ・ザ・ドッグのあさのネタバレレビュー・内容・結末

パワー・オブ・ザ・ドッグ(2021年製作の映画)
4.4

このレビューはネタバレを含みます

じわじわと好きだった。点と点が結ばれていく映画。何かでも同じ表現した気がするけど思い出せない。クロエの『ザ・ライダー』を大きな画面で見たかった人としてはノマドより少し似たような感覚を得られて。ゾクゾクする広い大地が好きだ。

何もかもがあからさまではないのだけど、『サイコ』みたいに視点が移り変わる映画だった。この人の話を聞いている、と思ったらもう意識は別の視点に流されている。意のままにされているというか、不思議な感覚。

動物の命の表現が結構辛くて、でも全部に意味があるの。無くせないの。皮を剥ぐのも、睾丸を抜くのも、兎をあっけなく殺してしまうところも、全部が物語の肝になっちゃってる。最初は「カリスマ的」と称されるフィルが畏怖の対象のはずなのに、じわりじわりとピーターの強さ、怖さに惹かれてしまう。最初のモノローグから、この映画はエディプス・コンプレックスの話だったんだ。でも父親の存在はほんの少し語られるのみ、再婚相手のジョージでもない。

フィルが抱えるマスキュリニティへの恐れ。最初はただのミソジニストだと思っていたんだけれど、どんどんピーターよりも怯えている人に見えてしまうのよね。憧れがコンプレックスのようで。というか、ホモソーシャルにおける男性の生きづらさ。

きっとこの映画の細部は時間が経てば忘れてしまう。今はまた見返したいと思えるけれど、それなりに重い。ジェーン・カンピオンは『ブライトスター』のイメージだったけど、これはまた予想を上回った。人によって好き嫌い分かれるのかな〜。気になる。

炭疽症(読めね〜よ)って何だろうと思って調べてさらにゾッとした。
あさ

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