色んな意味でキツかったけど確かに面白いとは思えた作品。
ベネディクト・カンバーバッチのキャラクターは魅力的ながらも非常に圧の強さが嫌らしい人間となっており、彼がそれまで演じたどのキャラとも似ていないその様は見事だったものの自分の苦手な性格だったので、そこがまずキツい点だった。
しかも後半からそのカンバーバッチが抱える秘密が露見して流れも変わるのだけれど、ジェーン・カンピオンらしさも感じられるその秘密やコディ・スミット=マクフィーとの関係性の変化が面白くもかなり露骨とも言える描写だったので、どんな感情を覚えたらいいのかちょっと戸惑いすらしてしまう程だった。
それでいてジョニー・グリーンウッドの音楽が絶妙に緊張感を際立たせたり、風景の映像とかが頗る美しい場面も多数あったりして素直に見事と感じられる要素も豊富だったので、そこと上記の変わった描写とのアンサンブル具合もまた面白いところだった。
ということで記憶に残る良い作品ではあったし、メインの男優二人とかが賞賛される理由もよくわかったのだけど、良くも悪くもちょっと変わり種な作風なので作品自体が作品賞とか受賞する類の映画とも思えないから、アカデミー賞最有力って触れ込みにも少し違和感を覚えてしまう。