1920年を舞台に牧場主の兄弟と弟が結婚した未亡人とその子供という4人の人間模様を描いた心理系サスペンス
大きく5つの話で構成されるが、基本的にネガティヴな感情を軸に淡々と進んでいくため、観るタイミングを選びそう
登場人物は基本的に二面性を持たせており、それが人物同士の関わりの中で表出されることで作品の深みを生んでいる
牧場主の兄フィルは典型的な男性至上主義に見えているカウボーイらしさが序盤では満載だが、実は同性愛者で大学も出ている
未亡人の息子ピーターは女々しさを感じるもののうさぎを解体しているシーンにも見られるように少しサイコパス
他の2人も先に記載した2人に比べれば弱いが同様にキャラクターが作品を通して二面性がある
タイトルの「犬の力」は愛する者を脅かす邪悪なものという意味で、ここで言う邪悪なものというのがフィルにもピーターにも見えた
最後の視点から見て順当にフィルのことだとは思いつつ、逆に本当にお金目的で結婚していたのだとしたら牧場主目線からすると本当に邪悪だったとはピーターのこととも捉えられる
最後の30分が結構怒涛で気づいたら次のシーンになっているので理解が置いていかれそうになるが、ピーターの母を守り抜くという冒頭のモノローグに繋がる終わり方で作品としてまとまりは良かった
一方で牛皮を売ったことやフィルが怪我をしたというのが偶発的だったというのが気にかかるが、見落としていた可能性もあり、また観てみたい
とはいえ、これだけの長さにも関わらず、テーマ性というのは正直そんなに心に残るものではなく、玄人好みだなという印象
考察の余地がどこまであるのかと言うのは頭が弱いのではわからないが、個人的にはそこまで考察の要素はなく解釈が多義にできるというだけで、人間の二面性についてもそこまでインパクトが際立っていたかというと首を傾げるものなので、解釈もそこまでの深みを感じるものになり得ないのではという感想だった
多分精進が足りていないだけなので精進します
音楽と映像は秀逸で、特に音楽で表現された不穏な感じは唯一無二である