なかなかのエグさ。じわりとくる切迫感、焦り、行き止まり意識。
痛みの感覚もほんとうに皮膚感覚で伝わり、一緒に声が出そうになる。しかも他者への暴力でもなく、まして他者からの暴力でもなく、自らが自らに対して行う暴力。これは実に観ているのが辛い。
フィクションなのにドキュメンタリー以上の臨場感。いつの間にか単なる覗き見の観客ではなくまるで彼女自身になったかのような錯覚さえ覚えてしまう。なんともリアル。
万人向けのエンタメではないが、観ておくべき佳作。望まない妊娠に対して処置が選択出来ないことの圧倒的な理不尽。彼女の自らの暴力はそうしたイデオロギーへの強烈なアンチテーゼでもある。
安心して安全に衛生的に処置ができる環境というのは、やはり合法化されていない状況下では犯罪的とならざるを得ないので、困難だというレベルでなく、ほとんど人生や生命を賭けて切実に精神的にも肉体的にも社会的にも闘うことなのだ。