KnightsofOdessa

コンペティションのKnightsofOdessaのレビュー・感想・評価

コンペティション(2021年製作の映画)
2.5
[アルゼンチン、これは風刺劇か茶番劇か] 50点

2021年ヴェネツィア映画祭コンペ部門選出作品。なんとペネロペ・クルスとアントニオ・バンデラスの本格的な共演は初らしい(『アイム・ソー・エキサイテッド!』で少しだけ共演、『ペイン・アンド・グローリー』で時代は離れているが親子を演じた)。大金持ちが自分の名前を後世に残すために傑作映画を作ろうと思い立ち、トイプードルみたいな髪型の監督ローラに癖強めな俳優二人を集めて兄弟の話を撮るという話。アントニオ・バンデラス演じるフェリックスは、演技は演技だけで良いと考えていて、逆にオスカル・マルティネス演じるイヴァンはキャラクターの過去を想像し役柄に入り込むことこそ求められていると考えており、読み合わせの時点で二人は互いのやり方に違和感を覚えるが、ローラのパワハラ演出のお陰で深刻にはならずに進んでいく。

物語は三人による読み合わせを中心に進んでいく。良く言えばセルフパロディやら風刺劇やら、悪く言えば茶番劇なのだが、ほぼ全編が展開されるローラの家のセットやそこでの撮影が中々面白く、内容そっちのけで見入ってしまった。それでも、読み合わせをする二人の真上に岩を吊り下げたり、これまで受賞してきたトロフィーを目の前で破壊したりとローラの笑えないパワハラ演出が、その光景そのものが面白く撮られているからこそグロテスクに見えてなんんとも言えない気持ちになる。キスのASMRをやってみたり、落ち葉を吹き飛ばす音を右耳と左耳を交互に押さえることで左右音声出力を意識して変えてみたり、工業用クソデカシュレッダー的破砕機でトロフィーを破壊したり、監督はYoutubeを色々漁ってるんだろうか。出してくるのはいいんだが、色々出してきただけで終わってるのがなんだかなあと。それにしても、出資者である大富豪は"映画はよく分からん"として監督に全権委任してるのがあまりにも理想的すぎて、どう観ていいか分からなくなってしまった。

"オフィシャル・コンペティション"がオフィシャル・コンペティションに選出されることでようやく本作品のギャグは完結したのだろう。内容の方で面白い部分はあまりなかったが。
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