このレビューはネタバレを含みます
力強く明るいジャズからスタートする本作。大友さんの曲が、この映画をぐっと厚くしてくれている。何度も助けられた。
目にも、耳にも、心地の良い映画。
1カット、1秒も無駄がない。
雪を踏み鳴らす音、野菜を洗う音、食べる音。
土井先生監修の精進料理たちと、その丁寧な工程。
季節ごとに変わる野菜たち。
沢田研二のモノローグ。
すべてが美しい。ずっとみていたかった。
お通夜のシーンなんか、もうたまらない。
筍を食べるシーンは、思わず生唾を飲んだ。
ああいうのがずっと続くと思っていた。
死の足音を確かに感じ、向き合うことを決意した主人公。
人は皆独りであるということを浮き彫りにするような展開に、少し面食らってしまった。
色んな「別れ」を経てやがてまた冬へと戻っていくが、ようやく自分のために料理をする彼の姿が見られたのは、最後だった。
「食べることは、生きること」。
人間から食を奪うことは、できないのだ。
ラストでまたぐん、と生命力を感じる。
「いただきます」が、生きることへの意思表明に聞こえるとは。
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劇場はほぼ満員、平均年齢は60〜70代。
私たちが1番若かったんじゃ?笑
マダムたちが、出てくる野菜の大きさにいちいち感嘆の声をあげたり、ときおり挟まるジョークにケラケラ笑ったり。
映画館で観る映画の良さを、存分に味わえた。
やさしい空間だった。
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正直腑に落ちない部分もたくさんある。
あんなに歳が離れているのに恋人設定はさすがに無理があったのでは?とか、
結婚するのって言うけど何歳の設定なんですか?などなど。
そして松たか子が美しすぎる。笑