〜序文〜
エド・シーランのアルバム「÷(ディバイド)」に収録されている「Nancy Mulligan(ナンシー・モリガン)」という楽曲があって。民謡調のリズムに、エド・シーランらしい早口で歌うこの曲をどうしても歌いたくて結構練習して歌えるようになった。
この曲の歌詞はエド・シーランのお祖父ちゃんのお話で。
北アイルランド、ベルファスト生まれのウィリアム・シーラン(エドの祖父)とアイルランド南部生まれのナンシー・モリガン(エドの祖母)の馴れ初めを歌っているんだけど、北アイルランドは英国領でプロテスタント。南のアイルランド共和国はカトリック。エドの祖父母は宗教の違いから結婚を反対されるけど、駆け落ちして結婚して、子供にも孫にも恵まれたという物語となっていて。
その「Nancy Mulligan」と本作が、僕の中では一瞬の火花を散らし、脳内のニューロンが結び付く快感をもたらした。
〜本文〜
俳優としても知られるケネス・ブラナー監督の半自叙伝。
彼が愛したベルファストという街と人を、少年の視点で描いた激しく・瑞々しく・優しい物語。
1969年、北アイルランドのベルファスト。少年バディは家族の温かさに包まれながらのびのびと成長していた。その一方で宗教の対立から生じた社会の混迷は、日を追う毎に激しさを増し、遂には人々の穏やかな暮らしをも脅かすようになる—— 。
美しい現在のベルファストの街並みを俯瞰的に見せる空撮ショットで幕開け。
画面はカラーからモノクロに。
現代から1969年へ。
壁を超えたら、其処は当時の街並みという演出から惹き込まれる。
序盤の暴動シーンの激しさを少年の目を通して映す事で、観ている者も恐怖の濁流に呑み込まれてしまう。
しかし、それでいて描かれるキャラクターは皆んな素敵で。マー(母親)もパー(父親)もポップ(祖父)もグラニー(祖母)も。大好き。
バディの父親を演じたジェイミー・ドーナンはイケメンパパだし、祖母を演じたジュディ・デンチも流石の存在感。
「解答が1つなら、紛争なんて起きないよ」
そうなのだ。
答えなんて1つじゃない。
それぞれに違う答えがあるから、
人は争う。
チキチキバンバン
サンダーバード
007
監督の幼少期、心躍らせた愛すべき映画への愛にも満ちている。
〜結論〜
そう、愛に満ちた素敵な作品だった。
家族皆んなの愛が其処にはあった。
お前が何処に行っても、ずっと味方だと諭してくれるポップの言葉も沁みる。
紛争の絶えないベルファストに残るのか。安全なイギリスに移住するのか。家族に決断の刻が迫まる。
ベルファストに残った者。
ベルファストを去った者。
生き残った者。
命を落とした者。
その、全てに捧げる鎮魂歌。
〜あとがき〜
「なんで洗剤なんか盗ってきたの!?」
「環境に優しいから…」
は、ワロタ。
ちょっぴり笑えて
ちょっぴり泣ける。
僕はこの物語が堪らなく好きだなぁ。