たむたむ

ベルファストのたむたむのレビュー・感想・評価

ベルファスト(2021年製作の映画)
3.6
【明日に向かって笑え!】
アマプラ見放題終了間際の滑り込み鑑賞。

1969年8月15日、北アイルランド・ベルファストで起こったプロテスタントとカトリックの動乱を背景に、同地出身である俳優・監督・舞台演出家として活躍するケネス・ブラナーが、幼少期の体験を投影し描き上げたという半自伝的作品。

まず、オープニングが秀逸。冒頭、カラーで映し出される現在のベルファストの街風景。塀を越え奥の住宅地を望むと…そこはモノクロの1969年代。あぁ、なんというノスタルジー。

本作は俗に言う「北アイルランド問題」を題材にしており、鑑賞にあたってはある程度事前情報を得た状態で観るのがベター。観るまでは、正直もっと重ーくシリアスな作品なのかと思っていましたが、蓋を開けてみれば魅力的な映像と快活な音楽に満ちた、温かく素敵なエンタメ作品でした。

全編モノクロなのかと思いきや、一部カラーが効果的に使われており、作中でてくる映画や演劇など、主人公バディが目にするものは色づいた状態で演出されている。恐らく監督自身、このような動乱の時代を生きる中で、唯一娯楽だけか色鮮やかに見えていたということなのかな。

ロシア対ウクライナや、イスラエル軍とハマスなど、今なお多くの国と地域で勃発する内紛のニュースは後を絶ちません。こんな時代だからこそ、改めて深く沁みるメッセージが詰まった作品。
やはり、ケネス・ブラナーの表現者としての能力は計り知れないものがありますね。

「答えが一つなら紛争など起きんよ」
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