どろぬま

ちょっと思い出しただけのどろぬまのネタバレレビュー・内容・結末

ちょっと思い出しただけ(2022年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

「二度と戻れない なんでもない 愛おしい日々」

予告編で流れる言葉だ。

僕は「二度と戻れない」時の残酷さ、人生の苦みを描いた映画が大好きで、この映画も思い出の一本になりそう。

別れたカップルを描いた映画というと、『花束みたいな恋をした』をどうしても思い出してしまうが、こっちの映画の方がビターな印象。夜にぐちゃぐちゃになった感傷的な心を、愛おしく抱きしめるような映画だと思った。

物語は二人が別れて、恐らく3年ほど経った日から始まる。ラブストーリーの主人公ではなくなった二人、それぞれの仕事を全うする二人。このシーンから6年間遡ることで、人生の不可逆性を見ている僕たちは強く感じてしまう。

映画の中盤から後半に描かれる、カップルが別れる日と、カップルになった日、出会った日は、それぞれのシーンを観て感じた気持ちと「あぁ、この日はもう二度と戻れないんだろうな」という気持ちが並走した。

最後また現代に時間が戻ってくるが、別れた二人は当然交差しない。しかし、「あの愛おしい日々」がそれぞれの身体の中に確かに残っていると感じた。二度と戻れなくてもいい。その日々は確かにあったのだから。ちょっと思い出しただけ、というタイトルが泣ける。
どろぬま

どろぬま