Koshii

ちょっと思い出しただけのKoshiiのレビュー・感想・評価

ちょっと思い出しただけ(2022年製作の映画)
3.7
ミニシアターを巡る旅にて。

程よく感傷的な気分になりたくて。


以下ネタバレを含みます。














以前鑑賞した「花束みたいな恋をした」のような雰囲気がフライヤーから漂い、音楽を尾崎世界観が担当していることもあって、そのターゲット層は明白である。

それ故か、画と音楽が鑑賞する人の記憶に刺さるように、露骨とまで思ってしまうほど、個人の過去と融合しようとしていたように感じた。

もちろん、主演二人の愛が育つ過程はとても素敵で、「映画の恋」として楽しめた。その一方で、本作はそういったよくある恋愛映画を「現在から過去へ」描くことに重きを置きすぎてるように感じ、タイトルの意味もそこまで響かなかった。



一つ。恋愛映画を観てて思うこと。本作も同様にふと考えるシーンがあった。

恋人と想いがすれ違ってしまった時。


照生君が、街行く人々と自分の状況を照らし合わせようとするシーン。


人は干渉に浸るとき、また浸りたいとき、周りの景色や人の移り変わりに、意味を求めたがる。
毎日、あんなに、意味をこぼしているというのにも関わらず。

そんなエゴにまみれた姿がなんとも悲しい。

でも、それは誰にでも共通する逃げ道の一つで、実際に僕もこの映画の鑑賞後、余韻に浸りながら駅に向かった時、普段は足も止めない路上ライブに心惹かれた。

ちゃっかり自分もそんなエゴにまみれながら、「それもいっか」と乗る電車を一本遅らせた。

p.s. 照生君の近所の公園で、未来の妻をずっと待っている男性。『ゴーストワールド』を彷彿とさせ、オマージュなのかなと思ったりして。
Koshii

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