Jun潤

わたし達はおとなのJun潤のレビュー・感想・評価

わたし達はおとな(2022年製作の映画)
4.2
2022.06.15

藤原季節出演作品。
等身大の女性のリアルをつむぐ映画シリーズ「ノットヒロインムービーズ」第一弾。

同棲している大学生カップルの優実と直哉。
ある日優実の体調に変化が起こり、妊娠が発覚する。
それを起点に描かれる、2人の過去と子供から大人へと成長していく未来の物語。

くぅぅ〜〜〜最ッ高にクズ男の映画だぜェェェェ!!!!!
最高に最低な“不”純度100%のラブストーリー。
『花束みたいな恋をした』以降、類似作品群の乱立の中でもう一つの逆完成形を観てしまった。
超“濃”縮版『花束みたいな恋をした』とも言えましょうか。

序盤、いえ、この場合優実と直哉の過去については、大学生らしい、子供と言えるほど幼くないし、大人と言えるほど成熟もしていない、そんな若者たちの様子が、中身の伴ってない、言動だけそれっぽくしている描写からビンビンに感じ取れました。

そして細かい描写を散りばめ、妊娠や大切な人の死という人生の大きな分岐点を迎え、無理矢理にでも大人にならなければならない若者たち。
優実の周囲にいる男もまぁことごとくクズかガキで、比較的安定している人間に見えた直哉の綻びが如実に浮かび上がってくるなかなかいやらしい構成。

終盤には感情が爆発し、周囲の状況や自身の体が大人に向かって変わっていくのに、精神や言動の成長が追いつかない優実と、幼稚な本音と、大人になりたくない、子供で居続けたいという身勝手を押し込んで、中身の伴っていない上っ面の大人っぽい言動をする直哉の対比。
気持ち的には直哉側で、精神的には優実側の僕からするとどちらの気持ちもわかるから、2人の感情の爆発が誘爆し涙腺が見事に崩壊。

あと本編内では回収されなかったのですが、優実の友人が言った「2回目」という言葉、直哉との一度目の別れの直後の嘔吐と、優実が妊娠したのは初めてではない…?
そして直哉が元カノと別れた原因も堕胎のようで、優実との性行為中も避妊はしていない、これはもうどうしようもないクズ男ですわ。
ここまで擁護のしようがないと作中のキャラクターの仕上がりとしては逆に完璧。

監督・脚本の加藤拓也は今作が長編映画デビューと言うのだから、邦画界の未来はまだまだ捨てたものではない。

本音をぶつけ合い、2人は再び別れた。
直哉はやりたいことを追い続けてまた同じ過ちを犯すのかもしれない、優実は果たして堕ろすのか産むのか。
消せない過去、直面する現実、決して輝いてはいない未来。
だけど朝ごはんを食べて明日へ向かおう、だって、『わたし達はおとな』。
Jun潤

Jun潤