Punisher田中

機動戦士ガンダム ククルス・ドアンの島のPunisher田中のレビュー・感想・評価

3.6
舞台はU.C.0079。
地球連邦軍は宇宙に住む人々の自治権を求めるジオン公国との戦争に突入。
世界総人口の半分が消失するほどの巨大な戦争の真っ只中だった。
独立して作戦を行う通称""木馬""ことホワイトベースのもとへ突然、無人島に残存する敵勢力を叩けという内容の指令が下る。
早速、調査を始めるためにアムロとカイはモビルスーツを繰り、ガンペリーを用いて例の無人島へ向かうのだったが....

ジオンや連邦なんかは関係無い、結局は人の心が大事なんだということを僕達に教えてくれた名作回1st第15話「ククルス・ドアンの島」を100分程の長編作品に仕上げた作品。
ガンダムならではの大迫力且つ、スピーディなモビルスーツ同士の戦闘描写も見所だとは思うが、個人的には心地良く身体に馴染むテンポ感で進行していく、ドアンとその子供達と共同生活をすることになるアムロのヒューマンドラマこそが今作の見所であり、メイン。
歪み合い、話したことも顔を見たことも無い相手と大して望んでもいない大義の為に殺し合わなければならない醜い戦争の中で、極小規模に築かれた平和で文化的な生活に勤しむ生き生きとしたアムロの姿はとても魅力的。
エネルギッシュな子供達と平和な生活、そこに佇むモビルスーツの異物感はガンダムシリーズ最高傑作のターンエーを観ているかの様な気持ちで、個人的には凄く救われた部分があった。
富野監督のガンダム作品をずっと追い続けていると、モビルスーツ同士の戦闘も観たいけども戦争に放り込まれた少年達が営む平和を観たいという、ファフナーの様な我儘な気持ちにさせられるため、今作は非常に好みにマッチした作品だと思う。

ただ、今作のベースとなる「ククルス・ドアンの島」は戦争パートからの突然の回だったからこそ、秘められたメッセージが効果的だったのだが、今作に関してはその効果が薄いというか時期が時期だからか、少々居た堪れない気持ちも生じてしまい心から楽しめなかったのも事実で、タイミングやらなんやらで惜しい作品になってしまったと....
よくいわれているような古い演出やモーションの点に関しては、それこそが今作の平和なシーンをより良くしているので個人的には良かったし、思った以上にダレることなくフルスロットルで最後までかっ飛ばしていたので本当に良く作られた作品だなと、改めて安彦監督が今作で1stガンダムに思い残すことは無いということがあながち間違いない様に感じ取れた。
寧ろ肝心のモビルスーツ同士の戦闘がなんとも...という感じで、イマドキな動きで旧機体達が戦闘を行うのは良かったが、もっと鈍重に渋さを出して欲しかったのが本音だし、ガンダムのモーションがイマイチで「コイツ、他とは違う...」というような圧倒的異質感がなかったのもまた。
しかし、本来ヒーローの立ち位置であるガンダムを「連邦の白い悪魔」と言われているように「悪魔」を意識させる様な演出とショットがあったのは良かった。
今作のガンダムは兵器としての恐怖感があって、そこはずば抜けて好き。
最後に安彦監督、ORIGINでも凄く思ったけど、本ッッッッ当にマ・クベ好きだよなぁ!と感じられるマ・クベ愛をひしひしと感じる作品でもあり、大変楽しませいただきました!!!!
ありがとうございました!!!