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機動戦士ガンダム ククルス・ドアンの島のらのレビュー・感想・評価

3.7
オリジナル版のアニメ「ククルス・ドアンの島」の回は未見だが、本作を観るとサブプロット回とはいえ「捨て回」のような扱いになっていたのが不思議なくらい良いエピソードだった(オリジナルからはストーリーや設定もいくらか改編されているのだろうが)。あたたかくほのぼのとしたタッチの中からさりげなくマ・クベ…目配せするように、社会的弱者こそが最も割を食うという戦争の現実を訴えかける。

小さな島の話ではあるが、ドアンの視点、アムロの視点、ドアンと生活を共にするマルコスやカーラや20人の子供たちの視点などが重層的に交わるポリフォニックな作品になっている(マルコスとカーラと子供たちってゴダール『男性・女性』の副題「マルクスとコカコーラの子供たち」から?と一瞬思ったけれど、絶対に違いますね)。

『機動戦士ガンダム』のテーマの一つが「戦争に巻き込まれる子どもたち」(ホワイトベース隊のほとんどが民間人の少年少女で構成されている)であるとすれば、『ククルス・ドアンの島』は本筋とは別の角度からそのテーマを補強するものであり、主役のアムロ・レイが普通の少年であるということをより強く印象付けるエピソードにもなっている。もろ戦時下である現在の社会情勢を思うと今リブートされたことには意味があり、胸を打たれる。剣戟のシーンも現在のアニメーション技術で古き良き時代劇のチャンバラの格調を蘇らせているようで良かった。
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