KnightsofOdessa

Feathers(原題)のKnightsofOdessaのレビュー・感想・評価

Feathers(原題)(2021年製作の映画)
3.0
[] 60点

主人公の女性は、シミだらけでヒビ割れた壁と塗装の剥げた家具に囲まれて、三人の子供を育てながら並行して家事も行っている。夫は彼女に買い物や献立の命令だけ出して手伝わず、子供にプレゼントを買ってくるなどの子育ての"美味しい部分"だけ掻っ攫っていく。そんな夫は息子の誕生パーティの席で、招いたマジシャンによる変身マジックに巻き込まれ、鶏になったまま元に戻らなくなってしまう。興味深いのは押し込められた家の外側に広がるポストアポカリプティックな世界観である。別にそれを目指しているわけではないのだが、煙と埃だらけの不毛の大地と廃墟のような建物が並び、水浸しの部屋の中を平然と牛やロバが闊歩し、ボンネットに態度の悪い猿が乗ってきて主人公を煽り散らかし、あちこち錆びついたボロボロの車で解呪師を探し回るその様は、終末後の世界と言われても遜色ない。更に、主人公は夫が鶏になったことについても稼ぎ頭がいなくなって家賃を滞納していることについても、特に驚きもせず淡々と対応しているのが印象的だ(闇落ちしたアキ・カウリスマキとか言われてて草)。デッドパン・シュールコメディのような描写は、主人公が無言の従順から徐々に自立し、自分の人生を奪い返していく過程と上手く調和していて、非常に見応えがあった。
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