滝井椎野

雨を告げる漂流団地の滝井椎野のレビュー・感想・評価

雨を告げる漂流団地(2022年製作の映画)
3.9
どうしても『ペンギン・ハイウェイ』でハードルが上がってしまっていたのが否めないが、評判の割には面白かったのではないだろうか。
夏はジュブナイルもののアニメ映画が観たくなる。子供たちが頑張り、ひと夏の冒険を得て成長する姿が何とも眩しい。本作も、その辺りのツボは抑えており、団地という過去を大切な思い出として昇華し、未来へと一歩踏み出す航祐と夏芽の姿には感動した。
惜しむらくは、夏感の薄さと航祐と夏芽、のっぽくん以外のキャラクターに対する掘り下げの薄さだろうか。尺の都合上、仕方がないとは思うのだが、本作でしつこく多用されている「やったか!?」→「駄目だ……」の王道展開をもう少し減らしても良かったのではないかと、愚考する。
本作のテーマである、人と場所の繋がりについて、団地の二人と令依菜と遊園地のエピソードが良かっただけに、その他のメンバーについても思い出の場所とエピソードを描いているだけでもかなり印象が違ったのではないだろうか。
かなりハードな展開が続く本作、もう少し楽しい夏休みが観たかった。せっかくの海に浮かぶ団地に子どもたちしかいないという魅力的な舞台設定が、辛い場面ばかりになってしまっているので、少し心苦しかった。もうすこし青空がみたかったというのが、正直なところである。
とはいえアニメーションは素晴らしく、スタジオコロリドの次回作にはまた期待したいと思えた。
滝井椎野

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