平田一

ブルーズド 打ちのめされてもの平田一のネタバレレビュー・内容・結末

3.9

このレビューはネタバレを含みます

“光るもの”はありました。

映画監督ハル・ベリーの“顔”も見えていましたし。

元総合格闘家のチャンピオン、ジャッキー・ジャスティスは不名誉な引退以降、運に見放されていた。恋人兼マネージャーに闇格闘技への出場を強いられることになり……そこから彼女は過去のこと、先のことと向き合うことに―――。

所謂“再起”のストーリーが、本作のキモですが、冒頭で述べたように、光るものはありました。

例えば主役のジャッキーは、人間失格一歩手前の域に位置する人間です(いや『ダイ・ハード3』かよw)。輝かしいキャリアは勿論、実力も備えてますが、私生活のボロボロぶりは同情よりも醜悪です。リングから途中で逃げて、不名誉な引退からは、落ちぶれた生活を“私の望み!”と吐き捨てる。挙句周囲の人間に八つ当たりを繰り返す(周囲にも問題アリだが)、近くにいたら接近NGレベルの人物造形です。

ただそこがこの映画で一番好きなところです。

同情の余地が無い、救いようのない人間にも、再起のチャンスは存在するのをしっかりと描いてて、しかも過多になりすぎないギリギリに抑えてます。ハル・ベリーってその塩梅が見たところ分かるようで、ある意味初期代表作の『チョコレート』がよぎります。というか見ててぶっちゃけ、ハル・ベリーが『チョコレート』を違う形で描いたような、同じ匂いをボクは見ていてこの映画に感じました。

で、同時に映像作家・ハル・ベリーも見えました。この人が描きたい、伝えたいテーマというのが、そのまま映像作家としての顔を見ていて感じたし、その瞬間が浮かんだだけでも、次回作が楽しみです。何で顔?と思った方は「食戟のソーマ」を是非w

そこからの再起もホントに見逃せないばかりですが、前半のご都合主義が大分マイナスポイントです。

いや、作劇事情なのは、分からなくはないけれど、人生の一日で、トラブルが待ったなしで、あんなにガンガン来るものか?集中砲火にしたってさ、流石に作為的すぎる。

私生活の再起のチャンス、昔の子供の問題が、一日であんなに来るって、ちょっと噓っぽすぎるよ(あるのかもしれないけれど)。しかもそこに説得力を与えられていなかった。そこで正直この映画、“あ、ダメ”って思ったよ。後半で挽回するけど、それでも前半白けたな……。

マイベスト格闘映画『サウスポー』好きとしては、勿体ない限りですが、良いところも結構あります。

映画監督・ハル・ベリーの次も結構気になるし。
平田一

平田一