ピロシキ

リコリス・ピザのピロシキのレビュー・感想・評価

リコリス・ピザ(2021年製作の映画)
4.4
たいしたイベントなんか何ひとつ起こりはしない。子どもや大人が飛行機に乗ったり車に乗ったりバイクに乗ったりあとはひたすら走ったりしながら、右へ行ったり左へ来たりしてるだけだ。なのになぜ、こんなにも面白い。理由は単純、ポール・トーマス・アンダーソンが天才だからである。

取り巻きはゴチャゴチャいるけども、あくまで中心に据えられるのは、歳上のオネイサンと歳下のボクチャンとの間に生まれる、付かず離れずのロマンス。とはいえ、自分が想像していたよりも女のほうは自立しておらず、想像していたよりも男のほうは生意気だった。お互いに嫉妬し嫉妬させながら繰り広げられる、マウンティング合戦。

前作ファントム・スレッドからの振れ幅は大きく、むしろ往年のブギーナイツとかマグノリアのような、とりあえずありったけ盛っといてやったからまあ座って食え!みたいな作品を、天才PTAがまたしても僕たちに振る舞ってくれた。そんな感覚だ。エンドロールの最後の最後まで続く高揚感。劇場明るくなってあやうく走り出しそうになった。
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