Jun潤

リコリス・ピザのJun潤のレビュー・感想・評価

リコリス・ピザ(2021年製作の映画)
3.5
2022.07.04

第94回アカデミー賞案件。
作品賞、監督賞、脚本賞にノミネートした作品。
主演のアラナ・ハイムとクーパー・ホフマンは今作で俳優デビュー。

1970年代のロサンゼルス、サンフェルナンド・バレー。
とある学校で学生と写真撮影スタッフとして出会ったアラナとゲイリー。
ゲイリーはアラナに一方的に言い寄り、彼女を食事へ誘う。
自己肯定感の低いアラナも満更でない様子。
時が経つに連れ、ゲイリーは所属していた劇団のテレビ収録や、思いつきのウォーターベッド販売、レンタルサイクル、ピンボールハウスなど様々な事業に手を出し、その度にアラナを巻き込んでいく。
そんなゲイリーに着いて行くアラナだったが、歳の差から彼の奔放すぎる態度に辟易とし、ゲイリーの想いを知っていながら、色々な男性と関わりを持つ。
時代の流れと共に右往左往するアラナとゲイリーの関係、果たしてその行く末は。

うむ、これこそ僕が洋画ドラマに手を出し辛かった要因を如実に感じられる作品。
日米で大きく違う価値観の一つとして、アメリカは成果主義を広く取り入れていることが挙げられると思っています。
それは仕事面においても、成果がよくてもそこに至るまでの過程を重んじる日本と、終わりよければ全てヨシ!なアメリカのイメージが、ちょっと雑ですがあります。
今作でも、アラナとゲイリーの関係は最終的に結ばれた!めでたしめでたし!!なところに邦画作品とのギャップを感じました。
それが良いかどうかは人それぞれによるところが大きいと思いますが、今作のレビューでは彼らが結ばれるに通った道筋にフィーチャーしてみようと思います。

個人的には今作こそ「恩を仇で返す男」VS「恩を仇で返す女」な構図が表れていたように感じます。
作品内外問わずカップルにしか見えないアラナとゲイリーも、それぞれの人生の行く末や価値観の相違、一番は年齢の差からくる精神の成熟度の違いから、なかなか双方向で想い合う関係にならず、必ずどこかで食い違いが生じる。
一方がもう一方を求めれば、そのもう一方は違う仕事をしているか、違う異性に言い寄っているか。
仕返しだと思っているのか、純粋で邪な下心からなのか、タイミングが神がかり的に噛み合わず、徒に双方歳を重ね、経験を積んでいく。

’70年代を舞台とし、実在の人物や出来事に彩られながら描かれるアラナとゲイリーの物語。
今作がアカデミー賞ノミネートまで突き刺さる作品に押し上げられた要因は、斜に構えすぎかもしれませんが、ゲイリーが真の愛情に目覚めたのは同性愛カップルの姿があったからなのかなと思ってしまいました。
それ以外にも、個人的にあまり造詣の深くない当時の人物や出来事の描写があったからなのかもしれませんが、僕の知識と経験の範囲内ではここまでが限界なようです…。

とは言えじゃあもう洋画ドラマを観ないのかと言われるとそうでもなく、むしろこうした違いを意識して観ることで新たな観方が見つかったり作品との出会いが産まれたりすると思うので、今後も引き続き観る作品の幅は広げていきますよ💪
Jun潤

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