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リコリス・ピザのserinaのネタバレレビュー・内容・結末

リコリス・ピザ(2021年製作の映画)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

まず、言及したいことがある。ちょっとジョークの通じる英語圏の友達と見てたらまじでこの動画のアジア人の男の子と同じ反応した。私なら笑わないだけじゃなくて、ハアアアア🙁とか大きなため息ついてアピってたかもしれない。

https://www.youtube.com/watch?v=gJ6yQurjxJg

ってのは冗談で、演出が過度すぎるから一周回って笑った。これは、白人や黒人やラテンなどに向けてのジョークじゃなくて、アジア人に向けてのジョークでしょ?

てかそもそも、日本人がアメリカ人のネイティブ英語を理解できないと思ってる大バカ教養ゼロの白人オジジを笑いにしてるってことで、視点を変えれば見え方大きく変わりませんか。

他の人種のアクセントやイントネーションでわらうなっていうのは理解はする。実際に喋り方を馬鹿にされた経験がある人もたくさんいるだろうから。一方で、コメディやエンタメとして昇華できないものかなと思っちゃう。アジアに限らず、ちょっとしたステレオタイプのいじりさえNGになるのは映画の可能性が狭まるわけで。だからってやりたい放題やられると不快なんで難しいなーとは思う。だって、LAとNew Yorkで互いに喋り方を笑いあってるじゃん。そこと同等とは言わないけど、同じ括りとして演出するのはありかなーって個人的に思ってる。他の人たちがこの映画を見て率直に不快だったか、笑えたかは聞いてみたい。

で、アラナとゲイリー見てたら、こんな風に人生を生き急いでみたくなってワクワクした。「見た直後は、ビタミン濃度143%!(i love youってこと)」とかインスタに書き込んでて、二人からロマンが溢れすぎてて、エンドロールの数分じゃ余韻から抜け出せてなかった様子。それくらい濃密。

人生長いんだからさ♪とかいう人いるけどさ、いや一瞬じゃない?死ぬ前になって「あれしたかった」「これしたかった」なんていう人しかみたことないわ。「やりたいこと全部できました」って嘘でも言って死ねる人生を送れたらなって感傷的な気分になったりもした。アラナとゲイリー、ふたりとも容赦なく傷つけあうじゃん。悪意を持って人を傷つける行為はクズがやることなんだけど、ごく稀に一生懸命・必死に生きてる故に誰かを傷つけちゃう人っているんだよね。まさに2人が後者だと思う。だから、傲慢で攻撃的なのに嫌いになれず、愛着すら湧いちゃうんだよ。もしも、心をナイフで傷つけ合ってたらB級スプラッター並みの血飛沫が画面に飛び散ってたわ。ロメロもびっくり。

スマホがない時代にさ、家の固定電話しかない時代にさ、思いを寄せてる女の子(アラナ)にゲイリーが家電するわけよ。コール音がなるだけで誰からの電話からはわからない中、アラナの家族が出ちゃうの。ゲイリーは、内心ドキドキで、そういえばさっき、アラナがあいつ(ランス)といちゃついてたな、僕が電話かけても嬉しくないかな。そんな風に自問自答してたら、「どちら様?」ってのに「ランスです!アラナいますか?」って何故か聞いちゃうの。受話器音からは、ダダダダって走ってくるアラナの足音がどこか陽気で「ヘーイ」ってめちゃくちゃ甘い声が耳に届く。その瞬間、ガチャンと電話を切って、目まんまる、顔真っ赤なゲイリー。可愛すぎた。今の時代じゃ絶対にありえないシチュエーション。可愛すぎた。切られたアラナは、あー、ランスじゃなくてゲイリーだったかって即気づくのも大事なポイント笑。

勘違いおじさんのバイクの後ろに乗って振り落とされる人生はいらないので、どっかの道を誰かと並走しながら全力疾走する人生ください。息切れするような人生を送りたくなるリコリスピザ、イタリア人が大嫌いなパイナップルピザみたいに、日本人が鼻で笑うカピカピのカルフォルニアロールのように、堂々と我が道を進んでいくふたりに乾杯。

見てない人は、この夏が終わるまでに観たらどう?
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