幽斎

悪魔館 死霊のせいなら、有罪。の幽斎のレビュー・感想・評価

4.2
4.2「悪魔館 死霊のせいなら、有罪。」2020年製作
4.2「死霊館 悪魔のせいなら、無罪。」2021年製作

視力検査の時間ではありません(笑)。

レビュー済「死霊館 悪魔のせいなら、無罪。」死霊館ユニバース8作目の人気シリーズ。対する本作「悪魔館 死霊のせいなら、有罪。」カナダ製作で原題「Anything for Jackson」。Julian Richingsは、Blood Snow Canadian Film Festivalで最優秀男優賞。Fangoria Chainsaw Awards で、Justin G. Dyckが監督賞候補。Sheila McCarthyもSant Cugat Fantàsticで最優秀女優賞と高い評価を得る。

虚偽ジャケ写とタイトルで有名なアメイジングD.C.が販売と聞いて嫌な予感しか無いが、発売がGEOのプルークで、安心したらコレですよ(笑)。プルークは他のメーカーが手を出さない作品、だけど稀にホームランをかっ飛ばすので、一部の愛好家から支持され、店が無く為る事しかニュースに為らないTSUTAYAよりも頑張ってる。円盤をレンタルする最後の砦として頑張って欲しい。

タイトルだけなら許せるがジャケ写まで死霊館ソックリでは、ワーナーに怒られないかと不安に為るが、アメイジングD.C.とか昔で言えばアルバトロスもソッチ系で、AVのタイトルの様な「やったモン勝ち!」。カナダの制作会社から邦題の許諾は得てるので法的に問題はないが、ルビコン川を渡る、禁を犯したカエサルを思い出す。GAGAもレビュー済「元カレとツイラクだけは絶対に避けたい件」とか有ったし(笑)。

アホなタイトルで見向きも去れない懸念も有るが、中身は良作と断言したい。死霊館シリーズと同じ館系ホラーだが、アウトラインは悪魔を崇拝する老夫婦が妊婦を誘拐して監禁する。そして妊婦の身体を使って悪魔を召喚すると言うプロット。つまり無事に悪魔が召喚されれば、妊婦は殺される運命に有る。御覧頂ければ分るが、よく有るエクソシズムと違い悪魔祓いの「逆」リバーサル・エクソシズムを描くアイデアが秀逸。本家の死霊館でも、そんな描写は無いので斬新と珍しく褒めたい。

「死霊館 悪魔のせいなら、無罪。」を借りたつもりで本作を観ても、詳しくない人は違和感すら憶え無いかも。ひよこ鑑定の様な邦題を勝ち抜いた方は、意外な掘り出し物に寧ろ喜ぶだろう。お正月恒例「格付けチェック」で芸能人が松葉ガニと蟹カマを間違えるように、美味しければソレで良いのだ(笑)。サガットなる悪魔は、カナダの古文書に記述が有るらしいが、秀逸なのは老夫婦が決して変人では無い事。寧ろ気の毒に為る人物背景は脚本の勝利と言えるが、見る方もその心情には察するに余り或る。

低予算で作品の大部分は監督の家で撮影されたらしいが、様々な悪霊が登場するのも地味に良い。ホラー・ファンならごっつぁんですと言いたくなるだろう。基本プロットが良いだけでなく、しっかりホラー要素を注ぎ込む事で中弛みを防ぐ役割も果たす。好印象なのは監督のセンスと、手抜きをしないクリエーターの心意気に有る。中でもデンタルフロスのアレは強烈。彼ら悪霊はM-1グランプリの様に登場すると、しっかり足跡を残して帰るので見てて飽きない。私的には刑事の悪霊はツボったなぁ(笑)。

終盤で登場する悪魔崇拝者のルックスと相反する中身はコメディの域だが、カナダ製だけに、ウエット感ある描写も随所に感じる。老夫婦の描き方は、日本のドラマに通じる哀愁を帯びたタッチと、喪失感を発露とするコンセプトは一見に値する。含みを残して終わるラストカットが、ホラーからスリラーへ変質してる点も見逃せない。クライマックスをしっかり見れば、お腹の子供がどう為ったのか?、是非自力で推理して欲しい。

「死霊館 悪魔のせいなら、無罪。」より面白い、と錯覚させてくれるA-Classスリラー。
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