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オマージュのsatoshiのレビュー・感想・評価

オマージュ(2021年製作の映画)
4.4
 昨今、やけに増えている「映画についての映画」系統の作品。しかし、本作は、そこに「時代を越えた女性たちの連帯の物語」というフェミニズム的な側面を加えている作品だった。

 本作は、作品がヒットに恵まれない女性監督が、60年代に活躍した女性監督の映画『女判事』の欠落した音声を吹き込むアルバイトをするさまを描く。そこで彼女は、当時の映画界における女性の差別的待遇を再度理解し、そして、歴史の中に埋もれ、「忘れられてしまった」存在を知っていく、という話です。

 映画の歴史は男性中心の歴史でした。しかし、「#MeToo」運動の中で、歴史の中に埋もれてしまった女性監督の名前が再発見されています。例えば、昨年、ドキュメンタリー映画『映画はアリスから始まった』が公開され、『バビロン』では20年代ハリウッドに実在した女性監督をモデルにした役が出てきます。

 本作もこうした流れの中にある作品ですが、最初に書いたとおり、女性同士の連帯の話でもあります。劇中で主人公は「三羽ガラス」の1人である女性に出会う下りがあります。あそこで洗濯物を一緒に取り込むシーンがとてもよく、彼女たちの間の壁が一気に取り払われた感じがしました。そして、主人公は、過去の映画人とも連帯していく。過去に差別的待遇の中で仕事をしてきた女性を知り、映画界で働く身として、地続きの歴史として認識してくわけです。余談ですが、あの編集技師のお婆ちゃん、ボケ始めてるのに、編集作業をするときだけめちゃくちゃテキパキ仕事してたのがまた良かった。

 そしてその連帯は、最後には映画界のみではなく、女性同士の連帯につながる。終盤、お隣さんが帰ってくるわけですが、そこで交わされる、「ありがとう」の台詞がとても良かった。
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