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マイスモールランドのxoのレビュー・感想・評価

マイスモールランド(2022年製作の映画)
3.5
あくまでも物語の骨格は普遍的な青春映画。
アイデンティティの模索、コミュニティの内側からも外側からも抑圧され居場所のない感覚、互いを理解し孤独を癒やしあえる存在との出会い、恋のような気持ち、そして現実の厳しさとの対峙。。

それだけでも十分に楽しませてくれるんだけど、そこにマイノリティであるということ、しかもただのマイノリティじゃない複雑さが絡んでくる。
そのバランスが良い。娯楽映画としての強度と、政治性・社会性とのバランス。「あ〜良い話だった」ってだけでは済ませられない程度の社会に対する批判的なメッセージや問題意識がある。見終えた後にはしっかりしたお土産をもらえる。クルド人やその歴史背景についてちゃんと調べようと思わされる。

主人公の彼女は、終始、国や行政から抑圧され、周囲の人間から抑圧され("差別"というよりマイクロアグレッション的な形で)、クルド人コミュニティの内側からも抑圧される。
明らかな悪役はパパ活男くらい。それぞれがそれぞれの正しさを持っていて、その物差しに彼女を当てはめ、悪気なしに抑圧してくる状況。
どっちにいっても居場所がないって意味では「サーミの血」を、理不尽なシステムって意味では「ブルーバイユー」を想起したり。

気になるところもわりとある作品ではあって、、
全体的に台詞が情緒強めで、意図はわかるものの説明的に思える(言葉から意図が透けて見える)ところが散見される。
「パパなんで帰ってこないの?」「しょうがなくなんかないよ!」とか泥臭い"決め台詞"が目立つ。
個人的にはもっと抑制が効いているほうが好きではあるけど、大衆性を考えるとこのへんが落とし所なのかな。。
ただ「お・も・て・な・し」のくだりは要らんかったような。。

あとは、男の子の方の描写が弱い印象。台詞で一言あるだけで親からそこまで虐げられているように見えないし、絵に興味があるようにも見えない。彼が描いたものを見ると余計にそう思う。。

どうでもいいけど、川口に住んでいながら「渋谷は人が多いという情報がある」っていうボヤッとした台詞も引っかかった。。

ROTH BART BARONの音楽はとても良かった。抑制的でありながらエモーショナルで美しい。大友良英の「その街のこども」を想起したり。
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