ムー

マイスモールランドのムーのレビュー・感想・評価

マイスモールランド(2022年製作の映画)
4.6
日本の難民問題をある少女の目線から炙り出す良作。

時折聞く、日本にいる難民問題を1人の少女から等身大でエグく描いていると感じます。
主人公の少女はルーツに厳格なクルド人の父親を持ち、家ではその文化やコミュニティを強いられるが、日本育ちで日本語が堪能な事はもちろん、勉学やバイトでも真面目で優秀です。彼女は両方を母国語としクルド人コミュニティからは日本人の橋渡しのような立ち位置になっています。そんな少女の家族は難民申請が不認定となり、家族や少女を制度的、人種的に追い詰めていく話です。

日本で難民申請が不認定になると働けもしないどころか、県外からも出られなくなるのですね。しかし、生きていくためには制度を違反するのも仕方なく、違反したものを日本人は建前で阻害していきます。
また、同じクルド人コミュニティでは文化を色濃く残すため、意志に関係なく、少女に強要します。
クルド人と日本人の両方の領域に跨るからこそ追い詰められ、隣で普通に育つ友達が通常得られる自由をその子は得られない。
そう言う意味で、今作の各登場人物の配置が秀逸すぎます。
また主人公の演技が上手い。昔から知っていたが、難しいポジションの役柄を自身が体験していたのかもしれないと思うくらい感じる。
頑張れという言葉に対して、「もう頑張ってます」というセリフは彼女の心境、状況を深く深く考えさせられました。

しかし時折、わかりやすく恋愛を描くための音楽の挿入仕方、選曲、登場人物の行動は邦画の悪い所を感じて苦手でした。それをしたことで物語の主軸がボケそうになるからです。

自分が従事している仕事が間接的に難民問題に関係するため、改めてネクタイを締める想いでした。
今作は難民側の目線で描いた作品でしたが、日本の制度や対処など行政側からの視点を知りたくなりました。
ムー

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