日本で暮らすクルド人家族に否応なく降りかかる行政の壁の理不尽さと共に、思春期の女子高生が文化の違いに引き裂かれそうになる展開もあってやるせなくなった。入管のおぞましさはこないだ観た「牛久」で知って、日本の排外主義が改めて恐ろしい。
冒頭のタイトル文字を囲む線が埼玉県の形なのがえっ？と思ったら、難民申請が却下されたことで在留資格が切れて埼玉県から出られなくなったことを意味してるんだね。サーリャが出自を隠すためにドイツ人と自称してるのが悲しい。彼女はすごい美人で学校でもクラスに馴染んでるんだけど、実生活でビザが切れて生活に制限がかかってることを誰にも言えず、ひそかに心を寄せる聡太にだけ打ち明けるのが青春モノの展開。でも彼女はクルドの風習で許嫁が決まってて、この恋は成就しないんだろうなっていうモヤモヤが「野菊の如き君なりき」的なしきたりに潰される恋路になるかと思ったところで、まさかの父の愛がジーンと来た。
３か国語が使われてるっていうテロップが出て、日本語とクルド語は分かったんだけどもう一つは何？と思って調べたらトルコ語だった。サーリャが最後にトルコ語の祈りをつぶやくのが重要だと思うけど、真意が汲み取れず。
主演の嵐莉菜はドイツや中東系の混血とのことで、本作の役にまさにハマってった。「アンビリーバボー」でおじいちゃんに会いに行く子だったとはびっくり！キネマ旬報受賞式の会見で、父親や妹役が本当の家族と知ってまたまたびっくり。奥平大兼はこないだ観た「あつい胸さわぎ」に出てたね。池脇千鶴の肥え加減にはギョッとしたけど、演技力は健在。
