りっく

アメリカから来た少女/アメリカン・ガールのりっくのレビュー・感想・評価

4.1
本作はSARS前夜の台湾を舞台にしているが、やはりコロナ禍の世界情勢が思い起こされる。人の行き来が断絶され、鎖国状態となることは、子どもたちの育った故郷であるアメリカとの断絶を意味する。

この「入る・入れられる/入らない・入れない」というシチュエーションは国境だけではなく、鍵を忘れて家に入れない、あるいはSARSの疑いがあって病院に隔離される等々、家族の距離感やアンバランスさ、ギクシャクした不和を描くのに効果的に働いている。また英語と中国語を切り替えながらの家族間の会話も微妙な関係性を見事に表している。

おそらくアメリカでの生活は充実していたのだろう。友達もいて、成績も優秀だった姉。このアメリカでの生活を具体的に回想を挟んで、現在の台湾の生活と対比する見せ方もできただろうが、作り手はあえて安直な演出をせずに、家庭や学校でのある一コマの表情や空気を丁寧に切り取っていくことで、それを十二分に描写してみせる。

そのうえで、スピーチコンテストという学校や社会が敷いたレールの上で成績のために母親に思いの丈を杓子定規に伝えるのではなく、「家」の中で伝えるのがまた良い。
りっく

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