女性同士の一途な恋愛模様が、爽やかかつ良い意味でベタに描かれている。
同性愛だからといって特別なものとして描くわけではないという意思に感じられる。
友人の結婚式で偶然再会した、高校時代バレーボール部の先輩のイーミンと後輩のティンティン。
青春時代の淡い恋心と、現在大人になって再燃する恋心とが、回想を交えて綴られる。
横並びよりも前後に位置する二人のほうが、心のつながりがさらに深まるようである。
二人の距離が縮まるとき、それもティンティンがイーミンに近づくときに、二人が向き合うところから位置が変わる。
二人で同じ方向を向くのである。
高校時代に、ティンティンの乗る自転車の後ろに乗せてもらって家まで送ってもらっていたイーミン。
部活練習の後だからと、イーミンが汗臭くない?と聞くと全然と答えるティンティン。
また、二人でイーミンの家で勉強をしているシーンでも、最初は机を挟んで向かい合わせで座っていたけれど、ティンティンがじゃれて彼女に近づき、後ろからイーミンの首元に顔をうずめる。
そしてベッドで並んで寝ているときも、背けたイーミンにティンティンは後ろから抱きついて、彼女の首元に顔を近づける。
それぞれが恋心を意識するのが、この体勢なのである。
また前後で前を見据えるのは、この二人の大切な愛おしい時間の思い出なのに、その場を奪われたティンティンは涙をこぼすのだ。
この涙は彼女のなかで決定的な瞬間になったはずである。
さらにこの位置は、タイトルにもある香りと繋がるのだ。
首元に顔をうずめること、自転車やバイクの二人乗りで後ろにつくことで彼女の香りを確認する。
汗の臭いをイーミンは気にするけれど、ティンティンはいい匂いと言うし、彼女たちの思い出と匂いは切っても切り離せないものなのだろう。
少々やり過ぎ感のあるベタさやチープに感じうる音楽の装入などの点が気になった。しかし、それぞれの心情が丁寧に描写されているため、感情移入のしやすい作品であるのはある意味観客は受け入れやすいのだろう。