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らくだい魔女 フウカと闇の魔女のひの字のレビュー・感想・評価

2.0
あっこれ映画というより大掛かりな同窓会だったんかな…と

観客に本来原作の対象となるような女児は一人もおらず。新規を取り込むような作り方でもなく。
客席には当時らく魔女にどハマりしていた私のような大人の女性が多かった、というかほとんどそうでしかなかった。(かろうじて高校生はいた) 思わず「らく魔女いいですよね〜!」とか話しかけようかとおもった。してないけども。

さすがにキースとの出会いの描写は必要だったかなと思う、今回の事の発端といえば発端なのだし。とか諸々、説明不足、ひとつの作品としてまとめあげようという気力不足、が否めない。
いやそりゃシリーズ物の途中の一冊が原作なんだからこういうもんなんですよと言われりゃ、まあ、うんソダヨネ……て頷くしかないのだが、やはり映画館にはひとつの作品を観に行くのだと思って行くわけでありまして。作品というよりはワンシーンだよな、と思ってしまった。それ以上でもそれ以下でもない。原作が素晴らしいのでシーンとしては泣けるところもあった、もちろん。

あの、別にハリーポッターとかではそんなこと思わないじゃないですか。ワンシーンじゃなくてひとつの作品だなって思えるじゃないですか。
せめて1巻を映像化するということはできなかったんだろうか? えっこの感じで二作目以降…つくれますか??

なんか、いったい何を狙ってこの作品をつくったんだろう…と美大の先生みたいなこと思い続けた一時間だった。
いや個人の趣味だったらいいけど一応これ商業作品じゃないですか。数多のプロをうごかしてるビジネスじゃないですか。素晴らしい作品を世に放たんという、重要なビジネス。

まあ宣伝の仕方もそうだったけど、原作読んだ人向け!!! 感が凄すぎて、知らない人が観たら絶対不明点があるし(少なくともグラウディがチトセのおじいちゃんということとか絶対分からん)打ち切り漫画みたいに思っちゃうんじゃないかと心配してしまう。
多分ここまでが切り取り方、構想の問題。

あと、全体的な演出が絶妙にダサいし説得力に欠ける。
いいシーンで石にメガイラの顔がうっすらドアップでそのまんま重なるとか、夕陽の中声だけとか、いやなんかシュールなんですけど…って形容しがたいむずがゆさ。いや、分かりやすくしたかったのは分かりますよ、でも石の中に映りこますとか、ビジュアル的な工夫ができたりしたんじゃないのかなって…

終わり方も主人公の顔とりあえずアップにしとけ〜みたいな女児アニメあるある演出。
こうしときゃそれっぽくなるだろと言わんばかりの。
さらにまさかの「結局何も分からなかったな〜!」発言。次回以降で分かるんかな〜って連続アニメならまだしも、連作が確定していなくて途中のシーンを映像化しただけというこの構造で聞くと脱力してしまう。

あのねあのね、なんか、そんなんじゃないのらく魔女は。
他のいくつかの作品みたいにしておけばそれっぽくなるとかそんなんじゃないの。
片親の子どものこととか他人と分かり合えないこととか陽のあたらない一部の人のこととか、そういう人たちも丁寧に描いた名作なの。他の作品と違うところ、いっぱいあるの。
とオタクは思ってしまって。

技術的なことは詳しくないので感覚レベルで申し訳ないのだけども、プロダクションIGって前ハイキューとかで観たけど、えっこんなんだったっけ? と思うくらいアニメーションをつくる枚数が少ない気がする。(※絵は綺麗です)なんか、予算かスケジュールでマズったんかなと思うくらい、他の子供向けアニメより「手間かけれませんでしたすみません」みを思ってしまった。

なんか、絵も綺麗だし原作もすごくいいのに、肝心なところで雑じゃあないですか? と思ってしまった。
最早やることに意義があるという感じなのか。それってプロのレベルでアリなんだろうか…
いや、あるんでしょうけどね。実際お気に入りの作品でやられるとツライもんがある。

メディアミックスって、しかも映画館での上映って、それだけお金も労力もかけているんだから多少なりと新規拡大を狙ってやるもんなんだと思っていた私の素人考えがおかしいのか?

同窓会にしては大掛かりだし、女児が観るには分かりにくいし大人が観るには工夫が足りないし、なんか、とにかく中途半端だな〜と感じた。

もちろん、長らく休載している隠れぎみの名作をこうやって取り上げてもらえただけで喜ぶべきだ。ありがたいことだと思っています。
ただあの、「らく魔女という映像作品!」ではなくて、「らく魔女という小説の一部をとりあえず映像化したぞ、ファンの君たち嬉しいだろ!?」て言われた感、ちょっとあったナ〜。いやそら嬉しいんですけど、まんま置き換えしたらいいってんではなくて、映像作品として美しく分かりやすくするにはどうしたらいいのかなというのを極限まで突き詰めたものがメディアミックスの本来あるべき姿ではないのかしらと、理想なんですけども。

あと周りをひたすらキャリア声優で囲みつつフウカちゃんだけ新人さんなのも大人の事情を感じた(悠木碧さんがよかったというただのワガママですが)

今回いちばん良かったことは、成田先生の「元気です!」というコメントが得られたことだ。よかったです本当によかった。成田先生くらい優秀な方が元気でいること、ご本が読める可能性があることが素晴らしい。

すみません好きなだけに文句ばっかつけて申し訳ないが、まあ、「まだ終わってないよ忘れないでね!!」というファンへ向けたメッセージだったのかな。そういう対象範囲の狭い映画もあるのか。

たぶん、私はこれを機によりたくさんの人にらく魔女を知ってもらえると期待していたから、こんなことでもやもやしてしまうんだろうけども。
でもこれで思い出す人が増えて、子どもに読ませたりして、そういうことだって有り得るもんな。
とにかく希望ではあったんだから、仕上がりの好みはさておいて、映像化を嬉しい事実だとは思っていたい。
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