茸のうち

オッペンハイマーの茸のうちのネタバレレビュー・内容・結末

オッペンハイマー(2023年製作の映画)
4.8

このレビューはネタバレを含みます

日本プレミアで一足先に鑑賞!3時間釘付けでした。
ストーリーライン、撮影、音楽、演技、演出、そして歴史的意義。全てを兼ね備えた作品。オスカーにふさわしい、ノーランの新たなマスターピースでした。こういう映画ですら撮れるようになったならノーランはスピルバーグと並んだと考えてもいい気さえする。あと今作、名言がめちゃくちゃ多い。量子力学がともすればほぼ哲学っていうこともあるのかな。とっても頭がよくなった気になれる映画という意味でも最高です。

原作通りオッペンハイマーの栄光と悲劇を描いており、前半はトリニティ実験までを描くサクセスストーリー伝記、後半は公聴会という名の魔女裁判であった法廷サスペンス。それぞれに違った面白さがあった。

トリニティ実験そのものは、結果を知ってても手に汗握る展開。そこに至るまではかなりテンポ良く、オッペンハイマーとその周囲の科学者の叡智の結晶がいかに作り上げられたかを疾走感すら感じる早さで描いている。ボーアやフェルミ、ノイマンといった著名な研究者が集まっていく展開は、ある種アベンジャーズのような頼もしさ。

後半は打って変わって狭い尋問部屋と公聴会しか映らないのでテンポはかなりスローに感じられ、そのギャップがまた窮屈さを増幅している。ストローズ視点がモノクロになるのも印象的だった。

ノーラン作品を見終わったあとに度肝を抜かれるのはいつものことなんですが、今回は歴代でも最高クラスのエンディング。ノーランお得意の時間軸操作は定番だけど、最後の最後にアインシュタインとの会話を持ってきて
あの形で終われるのは天才が過ぎるだろぉ。

やっぱり伝記ものだと白テロップでエピローグみたいのが定番だけど、エンディングロールまで間を与えぬ絶望的な死刑宣告。"we did."
今この「壊れている」時代で生きてるということを鑑賞者は嫌でも痛感させられる。あれだけ3時間、いかにオッペンハイマーが天才かを見せられ、世界中の科学者に予言者とまで言われた男の絶望的な言葉を聞いた上で、どう受け止めるべきなのか。ノーランが描きたかったのは過去ではなく現在なんだなと。

ただこれより重い問いをオッペンハイマーは自分自身に向けていたわけで、そこは可哀想だったなと感じた。文字通り世界を一変させてしまった重罪は、一人で背負う十字架としては大きすぎる。日本人として原爆投下自体について思うことはたくさんあるが、完成した事自体は状況を加味しても仕方ないなとも思う。

キャストも全員主演級どころかオスカー俳優がずらり。人生で見た作品で一番豪華だったかも。

強いて悪い点を1個上げるなら予習必須な知識が多い。事前に聞いてたのである程度下調べして行ったけどそれでも最大限楽しむには不十分だった感は否めないので-0.2。再勉強してもっかい見たい!
何はともかくノーラン様、今後も大傑作を作り続けてください。一生ついていきます!
"I believe we did."
茸のうち

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