ノラネコの呑んで観るシネマ

オッペンハイマーのノラネコの呑んで観るシネマのレビュー・感想・評価

オッペンハイマー(2023年製作の映画)
5.0
とてつもない傑作。
映画はオッペンハイマーの保安許可が剥奪された1954年の聴聞会と、彼を陥れたストローズの商務長官指名に伴う1959年の議会公聴会、この二つの“裁判”を軸に、時系列を頻繁にシャッフルする形で主人公の半生が描いてゆく。
主にオッペンハイマー視点のシーンはカラーで、ストローズ視点の部分はモノクロ。
ストローズを完全にオッペンハイマーのカウンターとしたことで、より言いたいことがクリアになった。
彼は現代のプロメテウスとして、核の火を人類に手渡したが、その意味を理解できるほど人類は聡明では無かった。
だから彼は核兵器そのものより、それを手にした人類に恐れを抱く。
決して原爆投下を肯定するような映画ではなく、許されざる物を作ってしまった主人公の苦悩が伝わってくる。
二つの視点を持ったことで、原作でも言及されていた「羅生門」性がキープされたのもいい。
研究所の池の辺りで、はたしてオッペンハイマーはアインシュタインに何と言ったのか。
これは是非劇場て確かめて欲しいのだが、会話劇だしIMAXの価値ある?と思ってる人には、とりあえず「ある」と伝えておきたい。
それと観る前に予習は必須。
当時人物が膨大な上に、全く説明してくれないからね。
ネタバレどうこう言う映画じゃないし、原作まで読まずとも、解説サイトくらいは抑えて行った方がいい。
印象として一番近いのは、ノーランの過去作より、核ならぬコンピュータの父を描いた「イミテーションゲーム」だろう。
常人を超える天才には、苦労が尽きないようで・・・
ブログ記事:
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